社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」

すべての記事をみる

カテゴリーからさがす

シリーズからさがす

件数:109件
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

強い社員を育てる育成法2

メンタルケアを実践するには 5

前回の原稿では、自己報酬追求型の社員を育てるための3つのトレーニング法のうち、1つ目である「認められたい気持ちを充足するトレーニング」について解説しました。今回の原稿では残りの2つの原稿について解説します。 「自分自身を満足させたい気持ちを充足するトレーニング」 2つ目のトレーニング法は、「自分自身を満足させたい気持ちを充足するトレーニング」です。私達は皆、「認められたい」という欲求を持っていますが、それと同時に「他者に認められるかどうかに関係なく、自分自身を満足させたい」という欲求を持っています。たとえば、あなたが今やっている仕事があるとしてもちろん上司に認められたいでしょうし、お客様にも認められたい気持ちがあるでしょう。しかし、そういった他者評価に関係なく「自分自身が納得し満足する仕事を成し遂げたい」という思いもあることでしょう。これがそういう欲求です。この欲求は大きな視点では、「他者にどう思われようと、自分自身が納得し満足する人生を送りたい」という生き方を作り出しますし、もっと具体的な次元では「他者にどう思われようと、自分が思ったことはきちんと表現したい」というコミュニケーションの欲求を作り出します。これは一見わがままし放題の社員を作るように思われるかもしれませんが、そうではありません。前回の原稿で書いた「他者に認めてもらえるトレーニング」をたっぷりやれば、「他者に受け入れられている」実感があるために、他者に不必要に攻撃的になることなく自分の言いたいことをしっかり表現できる人になっていきます。これができると、自分の中に「自分は幸せだなあ。よい生き方をしているなあ」という自己肯定感の気持ちが上昇し、メンタルリスクは低下しパフォーマンスが向上します。 「ストレスの本質を理解するワーク」 3つ目のトレーニング法は、「ストレスの本質を理解するワーク」です。ストレスとは、思い通りにならないことで、それは「自他に期待できないことを期待し続ける」ことから生まれます。私達日本人は、相手に「察しを求める(言わなくてもわかってほしい)」というコミュニケーションをしがちです。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

強い社員を育てる育成法1

メンタルケアを実践するには 4

前回は、経営者自身が他者に認められたいという欲求に突き動かされた「他者報追求型」の生き方・働き方から、他者からの評価どうこうではなく、自分自身を満足させまた社員満足に無条件で貢献する(利他の心)、という「自己報酬追求型」の生き方・働き方にシフトすることが、経営者自身のメンタルを安定させ、社員のメンタル問題を解決し、ひいてはESを向上させCS向上にもつながる方法だという観点からご説明しました。 今回は、社員自身が自助努力によって「自己報酬追求型」生き方・働き方を身に着けていく方法について書いていきます。経営者自身の利他心が向上さえすれば、メンタル不調は減りESは向上しCSが向上すると思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。なぜなら、いくら経営者が利他の心を注いでも、受け取る側の感受性の問題があるからです。端的に言うと、メンタルが揺らぐ人は揺らぎますし、メンタルダウンする人はします。社員側にも自助努力してもらう必要があるのです。 「他者報酬追求型」社員の特徴、「自己報酬追求型」社員の特徴とは。 他者報酬追求型の生き方・働き方が強くしみついている社員の特徴は次のようなことです。「周りの顔色を気にして発言を控える」「相手に気に入られるかどうかがすべての判断基準となる」「察しを求める、周りへの依存が強くなる」「この状態で利他行動を求められると燃え尽きる」など。この結果、メンタル不調が起きやすくなるのです。これに対して「自己報酬追求型」の生き方・働き方が身についている社員の特徴は次のようなことです。「周りの評価がどうあれ、思ったことは率直に発言し行動することで自分を満足させることができる」「たとえ相手に気に入られなかったとしても必要なときは、自分で判断し発言し行動するので自分を満たすことができる」「相手が察してくれるのを待つのではなく、自立的に行動する」「自分の幸福度が高いので、利他行動が比較的無理なくできる」 自己報酬追求型の生き方・働き方が身についている社員がたくさんいる会社は、とにかく意見交換が活発です。慣例や前例にとらわれないので、アイデアがどんどんわきます。上司に対しても思ったことはどんどん言うので、意思決定が速いのが特徴です。自分が困ったときも、「助けてほしい」「アドバイスがほしい」「相談に乗ってほしい」「いま手が空いていないのでちょっと待ってほしい」などの救援を求めることができる自分なので、メンタル不調にならないのです。また、いざとなったら自分を助けることできる自分であることを知っているので「自分は大丈夫だ」という気持ちが強く、よってチャレンジする意欲が高いのが特徴です。 自己報酬追求型の社員を育てるための3つのトレーニング法とは。 集団研修の形式で行う場合のポイントは3点です。1番目は、「認められたい、愛されたい」という欲求をたっぷり満たす、というトレーニングを行うことです。私達は多くの場合、自分の親にあるがままの自分をたっぷり認められ、愛してもらったという記憶を持っている人は非常少ないのです(本当は誤解なのですが)。親が他者の評価を気にする人であればあるほど、子供を世間的に評価の高い子に育てようとし、その結果、子供は親の顔色を気にして(親に認められようとして)、生きるという他者報酬追求型の行動パターンを身に着けてしまうからです。 「認められたい」欲求を充足させる方法は、弊社が行っている集団メンタルトレーニング法の中から、リスニング法、グループファシリテーション法、癒し法、コーチング法、などを組み合わせて行います。ポイントは、欧米から輸入されてきた様々なコミュニケーション法、メンタルトレーニング法をそのまま使わず工夫を施して活用することです。なぜなら私達日本人は欧米人に比べて傾向としてはっきり自分の感情を表現せず、相手の目に訴えたり、言葉のトーンの強弱を駆使することで相手に「わかってもらおう」とするからです。欧米人は自己表現することは大前提となっているため、欧米で生まれたコミュニケーションスキルはそれを前提としています。しかし、日本人はそれが前提とはなっていないのです。一例として、私たちが「これでよいですか?」と相手に問うて相手が「ハイ」と答えたとします。しかしその声のトーンによっては私たち日本人は、たとえ言葉が「イエス」でも、言い方で「ノー」を言っているということを理解することでしょう。最近はこういうニュアンスをあまり理解しない日本人も増えていることが組織の中でメンタル不調が増えている一因と考えていますが、ここをしっかりキャッチしないと私たち日本人は「認めてもらえた」感じられない人が多いのです。そのため弊社では、筑波大学で30年以上も日本人のパーソナリティ研究を行ってきたうえで作られた日本生まれの独自のコミュニケーションメソッドを使用して集団研修を行います。 次回の原稿では、自己報酬追求型の社員を育てるためのトレーニング法の残り2つの方法について解説します。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

強い社員を育てるには

メンタルケアを実践するには 3

前回の原稿では、周りの評価を気にする「他者報酬追求型」の生き方・働き方が、メンタル不調を作り出す、ということを書きました。仕事の場合、他者に評価していただいて報酬を得るわけですから、他者評価を気にするなと言われると、どういうこと? と思われるかもしれません。お伝えしたいことは、順番を変えましょうということなのです。「自分自身を満たす(自己報酬)」ということをまず最初に繰り返していくと、実力や実績が身に付き、その次に自然とお客様の評価(他者報酬)が得られるようになるのです。この順番を間違えるとどうなるかというと、とにかく今すぐ売り上げがほしい!=すぐに評価されたい!(他者報酬追求) となり、自分自身に実力もないのに無理なことをしてメンタル不調になったり、相手に無理なしわ寄せが行って評価を落とす(その結果、メンタル不調になる)ということになってしまうのです。 トップが「自己報酬追求型」の生き方・働き方に変わることが最も重要 実はすこし深い話をしますと、実は私たちの中に存在する「他者に認められたい」という欲求は非常に根深いものがあるのです。何故かというと結論を言うと、親の影響を大きく受けているからです。たとえば私たちの親の世代の多くは、非常に世間体や他者評価を気にした方々が少なくありませんでした。だからこそ私たちの世代も、受験競争に放り込まれ、人より良い成績、人より良い学校、人より良い会社、人より良い肩書、人よりよい車、人よりよい住居、人より多い年収、などの「他者評価」を求める生き方がある意味、しみついている人が多くいるのです。親が世間体を非常に気にする親だと私たちも、親の顔色を非常に気にして生きるという他者報酬追求型の行動特性が強く習性として根付いてしまうのです。 経営者の中には、売り上げをとことん追求する方がいます。規模拡大をとことん追求する方もいます。これが必要なときもあると思います。しかし、一方で時によってはこれは他者に認められたいという、強い他者承認欲求、裏返せば愛情飢餓感(自分は認められていないという気持ち)から作り出されているため、弊害を生む場合があることも少なくありません。私は今まで数多くの経営者のメンタルセッションを行ってきましたが、経営者自身のものの考え方が親子関係の影響から来ている場合が非常に多いのです。売り上げ拡大・規模拡大がうまくいっていても、経営者自身に「認められたい欲求」が強すぎるとき(認められなかった気持ちの裏返し)、常に焦燥感、不安が強くなり不安定な心理になります。そしてそのストレスは間違いなく、社員に向かうのです。すると社員は間違いなく経営者の顔色を見て仕事をするようになり(他者報酬追求型)、顧客のほうを向かなくなります。メンタル不調者が続発するようになります。社員が自発的に動かないとすると、それは間違いなく経営者が醸し出す雰囲気の影響を受けています。 「経営者自身の心の変化は敏感に社員に伝わります」 私はよく経営者の方にお願いすることがあります。それは「業績を向上させたかったら、親と和解し仲良くてください。それが経営者の心の認められたい欲求を満足させることになり、その結果、経営者の心が安定するのでそれが社員の幸せを向上させ、CSを向上させることにつながるのです」経営者の心の変化は敏感に社員に伝わります。経営者自身が「自分自身の欲求を満たす」ために動いているのか、「周囲の方々の欲求」を満たすために動いているのか。これは如実に雰囲気で伝わります。頭でわかっていてもなかなか実践するのは難しいなとお感じになる方には、私が行っているメンタルトレーニングが「自己変革」のお役にたつと思います。今回は経営者自身に焦点を当てましたが、次回は社員自身が、自己報酬追求型に変わっていけるようになるための方法について書きたいと思います。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

働き方の転換が「幸せ軸」の鍵

メンタルケアを実践するには 2

メンタル不調の問題が注目を集め始めたのは’90年代に入ってからです。’97年には自殺者が3万人を超えます。’80年代を経験されている方であればお分かりかもしれませんが、’80年代は日本経済はまだ好調でした。しかし昭和のバブルがはじけ‘90年代に入り多くの日本企業は人件費を縮小するために、成果主義、年功序列廃止、終身雇用廃止、リストラなどの、いわゆる勝ち組、負け組が強調された米国型マネジメントを導入するようになります。メンタル不調の問題が大きく注目されるようになったのは、このあたりからです。 実はこうした環境変化がもちろんメンタル不調者多発の一因ですが、ここではもう一つの要因に触れたいと思います。それは、21世紀に入り「私たち自身の働き方、生き方の変化」がもとめられてきた、という点です。 働き方=生き方を変化させることができた人は、メンタル不調にはならない 私たち日本人は(実は日本人じゃなくてもそうなのですが)、周りの顔色をうかがい、周りに嫌われないよう自分自身の動き方を決めようとする傾向が強い民族です。周りから認めてもらえることを第一に考えてそれに沿った生き方・働き方をすることを筑波大学名誉教授・宗像恒次博士は、「他者報酬追求型」の生き方・働き方と定義しています。一方、周りの評価を得られるかどうかにかかわらず自分自身を満足させることや、また他者に無条件に貢献できるかどうかという点を優先して考え行動する生き方・働き方を「自己報酬追求型」と定義しています。 私たちは20世紀までは、他者報酬追求型の生き方・働き方をしていれば社会の中で成功できました。周りの目や世間体を重んじ受験競争で勝ちすすみ、良い大学に入り名のある会社に入り、そして地位や名誉を得るために収入を向上させようとがんばる。常に成功は他者より「上か下か」という基準の中にあり、これは他者に評価されるかどうかが「幸せ」であるかどうかを決めるとした生き方・働き方(他者報酬追求型)であったわけです。仕事は、慣例を重視し他社(者)模倣をすることが大事で上司に評価されるかどうかがすべてですから、よく言われる「ヒラメ型社員」が出世の要件でした。しかし’90年代以降、評価されたいと頑張ってもポストがなかったり収入アップは必ずしも約束されるわけでもなく、ひどい場合は減給、降格、リストラなどは普通のことのように行われるようになりました。「他者に認められたい」という欲求が強ければ強いほど傷つきやすく、認められなかったときにメンタル不調になるのです。また’90年以降は、消費者ニーズが個別化するようになったため、ビジネスマンに求められる資質は、慣例よりも独創であり、左脳(ルール重視)よりも右脳(直感)であり、従順型よりも発信型であり、前例を守って問題なく無難に行う能力よりも試行錯誤して問題を起こしながらもたくましく道を切り開いていく能力、なのです。何が言いたいかというと、周りの顔色をうかがいながらそれに沿うという生き方・働き方が身についてしまっている人々にとっては、今の時代はそのままでは非常にストレスを感じてしまう世の中になってしまったのです。人の評価を一番の重大な関心事にしていては世の中に貢献できないのです。自分から発信・自己表現することが求められるようになったからです。 自分の中に「幸せ・喜び」が残るかどうかがポイント 「認めてもらえるかどうか」は、相手が決めることで本来自分にはどうすることもできないことです。しかしそこをどうしても優先しようとすると、たとえ運よく勝ち組になったとしても常に「焦燥感」や「不安」にさいなまされるメンタルリスクの高い生き方・働き方となるのです。逆に人の評価はどうあれ、自分自身を満足させる生き方・働き方、または無条件に他者に貢献することを優先する生き方・働き方は、たとえ周りから評価されなかったとしても自分自身の中に「幸せ・喜び」が残るのです。他人の評価があろうとなかろうとそれほど傷つかないため、メンタル不調にはならないのです。仕事とは認められて報酬をいただくことで他者評価は必要なのですが、重要なのは順番を間違えないということです。自分を満足させることや他者に貢献することを第一義的に追及していく中で、自分自身の能力や実力が高まり、その結果としてお客様に評価していただき報酬が得られる。こういう仕事観がメンタルに強い社員を育てますし、単にメンタルの問題だけではなく仕事のパフォーマンスをも高めることになるのです。 さて、実は「他者報酬追求型」の生き方・働き方を「自己報酬追求型」の生き方・働き方に変化させようとしたときに、簡単にすぐそう切り替えられる人と、頭では分かってもなかなかできない人、がいます。次回の原稿では、自己報酬追求型の生き方・働き方を実践できる社員を育てるために、経営者として何をすればよいのかということについて書いてみたいと思います。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

メンタル不調多発に学ぶこと

メンタルケアを実践するには 1

現在、どの企業でもメンタル不調者が多発していることはすでに周知のことです。すこし古いですが日経新聞の2012年10月10日の報道によると、WHO(世界保健機関)の発表では世界では少なくとも3億5千万人がうつ病であるとみられているとのことです。全人口を約70億人とすると約5%です。この割合を日本にあてはめると、人口を1億2千万人として約600万人に相当します。企業の中で休職者の割合は約1%と言われますが、休んでいなくてもメンタルの調子が悪そうな人を考えると、5%くらいいてもあながち大げさな数字とは言えないのではないでしょうか。今後もますます増えるであろうメンタル不調ですが、今までずいぶんたくさんの薬が発売されてきましたが、さらにますます増えており、これまでのような対処法ではもう無理な状況です。メンタルに対する考え方を根本から変えることがスタートなのではないか、というのが本稿で提言したいことなのです。 今までの生き方、働き方が合わなくなっている では、なぜこんなにメンタルが発生するのだろうか。それは21世紀の時代に、今までの20世紀的な生き方、働き方が合わなくなったから、です。合っていないのに、しかしどうしたらよいかわからずに20世紀的な生き方働き方を続けてしまっているから、全世界的にこんなに苦しんでいる人が増えているのです。こういった考え方をご紹介していきましょう。「人本経営」とは、働く人(経営層を含む)やその企業にかかわる人の「幸せ」を充足することから始めよう、ということが根本になっています。その企業にかかわる人の内面の「幸せ」を満たすと、おのずとお客様に貢献しようという気持ちが自然と高まってきて、結果的に顧客満足が高まり、ビジネスは好循環することで収益は上昇する、という経営手法です。こういうやり方で現在、多くの企業の収益が改善されています。この考え方を一個人に当てはめると、自分自身をまず「幸せ」な気持ちで満たそう、ということになります。まずは自分自身が幸せだなあと感じる生き方・働き方をしているとどうなるでしょうか。少なくとも、メンタル不調になる人はずいぶん減ることでしょう。また他者にもっと貢献しよう、他者に親切にしよう、といういわゆる「利他の心」が無理なく自然にもわいてくることでしょう。 社員自身が満たされていない可能性が高い 問題は、今、私たちが実践している生き方、働き方はそもそも私たち自身を幸せな気持ちにさせているのか、ということなのです。一個人で考えると生き方・働き方というのは、会社から与えられるという側面もありますが、基本的には自分自身の問題です。基本的に自分自身に選択権があるのです。私たちは「幸せだなあ」という気持ちで、毎日を送っているのでしょうか。働いているのでしょうか。おそらく、そういう気持ちの人は非常に少ないでしょう。だからこそこんなにメンタル不調の人が多発するのです。現在、メンタル不調になっていなくても、なんとなく面白くない気持ちで毎日を送っている人まで入れると非常に多いのでないでしょうか。日本人ビジネスマンは国際的に比較すると、非常に幸福感が低いという調査結果もあります。もし、そうだとすると、自分自身が満たされていない可能性が高いのですから、その心理状態のままで仕事を行おうとすると、言い換えるとビジネスの基本である他者貢献(利他行動)を行おうとすると、いつかガス欠となり燃え尽きてしまうということです。これは企業単位で考えるとわかりやすいかもしれません。つまりES(従業員満足)が満たされていないままで、全力でCS(顧客様満足)を高めなさい、と命じるといつか社員は燃え尽きて疲弊してしまいます。では、なぜ私たちの生き方・働き方はこうなってしまったのか。そしてどうしたらよいのか。この大きな課題について少しづつ考えていきましょう。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

“ほめる”を具体化する表彰式

社員のやる気を引き出すには 8

社員のやる気を引き出すために“ほめる”ことが有効であると解説しましたが、それをどのように具体化すれば良いのでしょうか。最も代表的な施策に、表彰式があります。表彰式には、半期ごとに仕事の成果に応じて表彰するスタイルだけでなく、勤続年数に応じた表彰、社員の対応に感謝の意を表す表彰、コンテスト形式で社員のスキルを表彰するなど、様々なタイミングや手法があります。その意味で、会社の状況や環境に応じて導入しやすい社内イベントといえます。また、表彰式は表彰対象者だけに特化したイベントではありません。「次は自分が壇上に上がりたい」という気持ちにさせることで、他の社員のモチベーションも高めることができる施策なのです。ここでは、社員のやる気を引き出すための“表彰式”を紹介していきましょう。 社長の想いが伝わる社内イベント“表彰式” 多くの経営者が、社員とのコミュニケーションが不足していると悩んでいます。その中、「表彰式で感極まって泣き出す社員がいます」というと驚く方もいらっしゃるでしょう。事実、表彰式の演出によっては、社長の想いをストレートに伝えることができる社内イベントです。そのためには、表彰式自体が感謝を伝える場として成立させることが必要です。いつものような表彰式という、おざなりな進め方では社員の感動は生まれませんし、社長の感謝は伝わりません。それではどうすれば良いのでしょうか。一番大切なことは、社長自身の言葉で、表彰事由を伝えることです。社長の言葉で伝えることは、社員の功績を社長自身が理解していることが表彰者本人の感動をうむだけでなく、社員全員に伝わり、次はこの舞台に立ちたい!と思う社員が増え、モチベーションアップにつながります。また、サプライズとして、社員の家族を表彰式にサプライズで呼ぶことも、効果的です。家族から「おめでとう!」や「いつもありがとう!」と言われることで、今まで頑張ってきた苦労などが一瞬で報われ、これからも家族のためにかんばろう!と強く思うものです。人本経営では、社員とその家族を大切にすることが大切だと考えています。このように、表彰式は、感謝をより具体的に伝える場としてわかりやすい施策といえるでしょう。 数字だけでなく数字以外で表彰する“表彰式”  表彰式を行うには、何を基準に表彰するかを考えなくてはいけません。一般的に行われる売上数字だけで評価する表彰式は、人本経営の趣旨にそぐわない施策となるからです。そのため、数字以外の指標で表彰対象を選定することが必要です。例えば、これまでの業務領域以外に新しいチャレンジをした社員や、様々な困難やハードルを克服するために工夫をした社員を表彰するなどが考えられます。  それを実現するために、あえて売上数字では評価できない業務部門での表彰を行う会社があります。例えば、リクルートが行っている総務を対象にした表彰や、佐川急便での女性パートを表彰する仕組み。会社には直接的に売上を生み出す部署だけでなく、間接業務部門もあります。また、最近は正社員だけでなく契約社員、嘱託社員、パート・アルバイト、インターンなど、勤務形態も様々。いずれも会社を経営する上では必要な部署、働き手であることに違いありません。そのため、メインの業務を行っている部署だけでなく、普段、日の当たらない部署や非社員を対象としたケアが、全社的にやる気を底上げするために必要だと考え導入しているのです。 ノウハウの蓄積を目指すコンテスト型“表彰式” コンテスト型の表彰式では、業務に必要な独自のスキルアップを表彰することができます。独自のスキルアップにスポットライトを当てることで、全社のスキルを底上げして、企業ブランドとして活用できます。また、やる気を出せば表彰対象となれることは、社員一人一人のモチベーションアップを上げるキッカケとなります。特に、無形のサービスを独自のスキルとして表彰することは効果的です。実際、レジ打ち、接客サービス、包装技術、トラブル対応、コールセンター対応など、様々なサービスでコンテストが行われています。土木工事を請け負う木村工業株式会社では、社内のスキルアップとベテラン社員の技術の伝承の一環として、新入社員を対象に工事技術の研修を設け、独自の審査基準でスキル認定を行っています。この仕組みの導入で、新人とベテランの両方のやる気を育み、世代間ギャップを埋める交流が生まれます。また、相談し教えてもらう社風は、社内を活性化させ、企業文化として培われています。この取り組みは、直接的なコンテスト形式ではありませんが、その応用バージョンといえるでしょう。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

社内で事例共有する

社員のやる気を引き出すには 7

ビジネスシーンでの基本ルールに『報・連・相』がありますが、社内で事例共有することは、これを具体化することに他なりません。まさに、仕事が完了した際や半期・年度単位で“報告”する、仕事の成果や進捗状況を社内全体に“連絡”する、発生している課題を“相談”する施策です。それでは、事例共有がどのように社員のやる気を引き出すのかを考えていきましょう。 事例共有の“報告”効果 社員を“ほめる”ネタを収集できる まず、社員の視点で見ると、報告レポートを書くこと自体、自分の仕事内容と成果を自身で振り返ることになり、仕事の進め方を見つめ直し、「どこが勝ちパターンなのか」「ここを直せばもっと良くなるのではないか」という分析を行う良い機会となります。仕事をやりっぱなしではなく、次につながる足がかりにすることができるのです。また、その報告レポートは事実や経過を報告するだけでなく、社員が会社に対して自分をアピールする場にもなります。反面、会社の視点で見るとどうでしょう。社員の報告を受けることは、社員がどこでつまずき、どう対処したか、数字だけではわからない苦労と工夫、チャレンジを把握できる仕組みとなります。そのため、社員のやる気を引き出すのに最も有効な“ほめる”ための情報収集できる仕組みといえます。指示した業務の進捗を報告させることで、会社としては全社員の業務の状況が把握でき、会社全体の状況を把握できるだけでなく、会社として新しく伸びる可能性を発見できることにもつながります。 事例共有の“連絡”効果 社内で評価し合いノウハウ化する この効果を上手く活用できているのが、居酒屋のチェーン『塚田農場』を運営する株式会社エー・ピー・カンパニー。この会社では、店舗で提供した料理の際に出た鳥の油を活用して一口チャーハンを作りメッセージを添える、お薦めのトッピングソースを小皿で提供するなどの『小さなサービス』が好評です。このサービスを若い女性が中心のパートやアルバイトに考える段階から委ねて、実践したアイデアを社内のインフラで報告してもらい、全店舗で共有する仕組みを導入しています。インフラに載せられたアイデアは、他の店舗のスタッフも見ることができ、他の店舗でも実践してみてどうだったか、評価を戻すことができます。これにより、報告した自分のアイデアが、全店舗で評価され“いいね!”形式で認めてもらうこと、それが結果的に、正社員の2倍以上いるパートやアルバイトのやる気を向上させ、チェーン全体での接客サービス力のアップにもつながっています。このように、社員の仕事を社内に“連絡(アナウンス)”することは、全社的にその社員の功績を讃えることにつながり、当事者の社員にとって全社的に自分をアピールできる機会を得ることになります。また、同時に「どうすれば会社に認められるのか」「どういうことで全社的に評価されるのか」を学ぶ場としても活用できます。共有される事例をみる→事例を改良して実行する→クライアントの満足を引き出すというサイクルを創り出すキッカケになります。さらにこのサイクルを創り出すことこそが、社員が自ら学んで実現する『前向きな社風づくり』となります。そして最終的には、連絡し合った事例を評価し体系的に分類することで、その会社のノウハウとして構築でき、企業ブランドを高めることになります。 事例共有の“相談”効果 失敗を活かして次につなげる 成功事例だけでなく失敗した事例こそ、会社の資産となると考える会社もあります。失敗した原因を追究する仕組みや体制が、次の失敗を防ぐ最善の対処法になりえると考えているからです。そのため、この考えの会社では事例を収集するだけではなく、集められた事例を分析して、その原因を徹底的に追求するための機能を持っています。例えば、ある大手プロダクションでは、「無理、ロス、トラブル」を無くすることをミッションに『MLT研究会』を立ち上げ、全社の失敗や事故、トラブルが起こった事例の情報を早急に吸い上げる体制を取っています。この研究会ではその原因を追究してその対応をルール化して、全社にアナウンスするまでが業務です。社員からすれば、トラブルが発生した事例を研究会という社内の専門集団に相談できる体制ともいえます。また、ある情報システム会社では、失敗を報告するとお金がもらえる仕組みを導入しています。これは、ミスや失敗、事故が会社に報告され、顕在化されやすい体制をつくりことに他なりません。トラブル発生時には「自分の失敗を隠したい」「自分で何とかしたい」と考える社員は少なくありません。しかし、報告せずに担当だけで悩み、誰にも相談しないまま時間だけが経過するのは、状況がますます悪化する要因となります。失敗を隠す、自分だけで何とかしようとすることは、かえってミスが大きくなり、大きな損失につながります。要は、社員が早く失敗を報告して相談できる環境に作り替えることが大切なのです。このような環境づくりが、失敗を報告することや相談することに対する社員の「自分の評価が下がるかも」「ペナルティがあるかもしれない」という心配を小さくして、失敗を恐れず仕事に思い切り取り込めるように促します。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

社員を“ほめて”育てる

社員のやる気を引き出すには 6

日常生活で「自分は誉められて伸びる人」と話すシーンをよく見かけることがあります。確かに、社員のやる気を引き出す「モチベーションマネジメント」を考える上で、“ほめる”ことは重要な要素です。ここでは、どうして“ほめる”ことが大切なのかを考えながら、どのような形で社員を“ほめて”育てるのかを紹介していきましょう。 社員のやる気を高めるのに “ほめる”はどんな意味を持つのか この問いを考える上で、『マズローの5つの欲求』が参考になります。この考え方は、アメリカの心理学者のアブハム・マズロー(1908/4/1~1970/6/8)が提唱した人間性心理学の古典ですが、現在では社員のやる気を考える際、頻繁に引用されています。 マズローは人間の根本的な欲求を5つに分類し、下の階層を満足すると、次の上位の欲求に移ると提唱しました。まず、第一階層の『生理的欲求』は、生きていくための基本的で本能的な欲求です。社員の視点で言い換えれば、自分自身の生活を維持したい、そのために働きたい欲求で、湿度・空調・施設などの基本的な職場環境や基本給などを求めます。第二階層の『安全欲求』には、危機を回避したい、安全・安心に暮らしたいという欲求を含みます。つまり、安定して給与が欲しい、安全に働きたいなどの欲求で、会社には雇用の維持をはじめ、安全な職場環境、各種手当、業務上の安全などを要求します。次の『社会的欲求(帰属欲求)』は、集団に属したり、仲間を求めたりする欲求。ここでは、会社や仲間を大切にしたい、自分も大切にされたいと考え、会社にそれなりに貢献したいと感じています。そして会社には、仕事における良好な人間関係と、信頼のおける上司を求めます。ここまでの欲求は、外的に満たされたい思いから生まれます。第四階層の『尊厳欲求(承認欲求)』は、他者から認められたい、尊敬されたいという欲求です。ここからは外的なモノではなく、内的な心を満たしたいという欲求に変わります。この段階では、社員は社内で認められたい、他の社員を認めたい、仲間の能力を伸ばしたいと考えており、高い肩書、上司としての尊厳、業績による増収、責任ある重要な責務などを求めるようになります。最後の『自己実現欲求』とは、自分の能力を引き出し創造的活動がしたい欲求。創造的業務、仕事への挑戦、業務における可能性の実現、昇進の機会を求め、使命を理解してもっと会社に貢献したい、能力を最大限発揮したいと考えている段階です。 この第五階層の『自己実現欲求』まで社員を育成できれば、積極的に会社に貢献しようと動くので会社が自然と元気になっていきます。それには、第一階層から第三階層までの欲求に対応して会社の環境を整えた上で、第四階層の『尊厳欲求(承認欲求)』に応えて、社員のやる気を高めていくことが必要です。『社員を“ほめて”育てる』ことは、この第四階層への対応として代表的な手法で、モチベーションマネジメントを図るために重要といえます。それでは、どのように“ほめて”育てていけば良いのでしょう。それには3つの手法があります。 “ほめる”手法①:社員のやる気を直接的に刺激する『成果承認』 『成果承認』とは、社員の成し得た仕事の結果やスキルのレベルなどを“ほめる”こと。ヒトは無意識に自分と他者を比較する生き物です。また、自分のことだけでなく、他者のことを自分の基準に照らし合わせて格付けします。そのため、自分の成果を褒めてもらうことで、スムーズに会社や仕事を自分ごと化することができ、社員のやる気を直接的に刺激します。しかし、売上や仕事の規模などの数字で評価すると経営が業績軸に陥るので、十分な注意が必要です。その対策として、単に数字だけで評価するのではなく、そこに至るまでの努力や工夫、チャレンジ精神などを考慮して“ほめる”ことが重要となります。例えば、導入している企業も多い「表彰式」では、単純に売上で順位を決めるのではなく、会社でこれまで行ったことのない業務領域への拡大や、新たなノウハウとなりえる要素を含むことなどを評価することで解決できます。「表彰式」の評価基準を配慮することで、社員から進んで新しいチャレンジに試みる可能性が高くなり、会社としても成長することができます。さらに、その延長線上に、会社としてのチャレンジプランを社員から公募して社員のやる気を会社の意欲に変える「社内ベンチャー大賞」もあります。 “ほめる”手法②:社員の帰属意識を創りだす『成長承認』 『成長承認』とは、成果にかかわらず、日常の業務で一生懸命に取り組む努力をしたこと、社員それぞれの状況にあった成長の跡を、発見して“ほめる”ことです。例えば、日常の努力に対して細かい説明や解説を抜きに、「よくやった」「いつも頑張ってるな」「良い工夫だった」と一言かけるだけでも実施できます。社員の視点では、上司が「自分のことをきちんと見てくれている」と感じて、認められたい欲求が満たされます。創業79年の松下徽章株式会社(東京都台東区、代表 松下芳宗)は、表彰式の盾やカップなどを長年提供してきた会社です。その中で、日常的に“ほめる”ことがヒトを育てるために大切と感じて、上司が部下の成長を“ほめる”ことを形にした「ほメダル」や、その苦労を讃え、労うメッセージを入れる「コトバコ」など、面白いツールを開発しました。なにも半期ごとや年度末に大々的に“ほめる”だけでなく、通常の勤務の中で気が付いた時が“ほめる”タイミングと捉えることが重要なポイントといえます。 “ほめる”手法③:職場の雰囲気が変わり離職率が下がる『存在承認』 『存在承認』とは、その人に関心を持ち、その存在を認め“ほめる”ことを指します。挨拶や名前を呼ぶ、食事や飲み会に誘うなどもこれにあたります。要は「あなたがいてよかった」「あなたのおかげで助かった」ということを伝えることです。これを上手に“ほめる”仕組みに導入できているのは、美容室チェーンの株式会社りんごの木(長野市、代表取締役社長 島田良)。この企業では各店舗の朝礼で、スタッフ全員で前日1日にあった出来事を振り返り、他のスタッフ対する感謝の言葉を発表する機会を設けています。これにより、店舗に和気あいあいとした雰囲気が生まれ、スタッフが互いに助け合う習慣が根付きました。さらに職場の雰囲気が変わることで、「この店で働いていたい」という意識が生まれ、スタッフの離職率が著しく低下しました。人材確保ができることで、お客様により良いサービスが提供できています。 “ほめる”3つの手法は、組み合わせること、継続することでその効果がより高まります。あなたの会社でも、まずは小さく“ほめる”ことから始めてみてはいかがでしょう。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

中間管理職のねぎらいマネジメント

社員のやる気を引き出すには 5

社員のやる気を引き出す「モチベーションマネジメント」を考える上で、その対象は社員全員となります。しかし、社員全体と対象にすると、個々の状況に応じて変えて対応するというより、まだ会社に慣れていない社員や、自分の仕事のスタイルが形成されていない社員、つまり若手社員に重点を置く傾向があります。逆に中堅社員以降、特に中間管理職はその対象として認識されないケースが多くなります。それで大丈夫なのでしょうか。 中間管理職のやる気は会社を元気にするために必須 中間管理職になると、社内での責任はもちろん、顧客との関わり方が変わります。その際には、配置換えや部下の増員など、仕事環境の大きな変化に直面することも少なくありません。その状況下で、周りに相談できず、部下の分まで自分が責任を負わざるをえないため、今までにない孤立感を覚え、ストレスを抱えてしまうのです。また、以前から知られているように、中間管理職は上司の命令や要望を実現しながらも、部下からの指摘や希望をくみ取って仕事しないといけない“板挟み状態”にあり、精神的にも肉体的にもかなりの負担がかかり、更にストレスが溜まっていきます。このような多くのストレスの中にいる中間管理職は、経営側の意向を現場に伝えて、社員に浸透させて運用していく、重要なポジションにあります。そのため、中間管理職がストレスに負けずにやる気を持って、その責務に臨める環境を早急に創り出す必要があるのです。ところで、昨今、「出世したくない」と考える若手社員が多くなっています。時代の変化による価値観の違いがその大きな要因といわれていますが、こうした中間管理職の置かれている立場を傍らで見ているため、敬遠したいと考えている層も少なくないはずです。社員にそういった認識が生まれてしまうと、社員の自己成長だけでなく、会社の成長や組織が成熟していく流れが滞って、大きな不具合が生じてしまいます。そのため、中間管理職に対するケアは、モチベーションマネジメントとして重要な要素になるといえるのです。 中間管理職にこそ “ねぎらい”が必要 人間が求める上位の欲求に「認めてもらうこと」があります。中間管理職の場合も同じす。その立場やストレスを理解した上で、自身が行ってきたことを認めてもらい、その苦労をねぎらってもらうこと、それこそが中間管理職の求めていることです。一番簡単なのは、中間管理職が上司に報告した際に、上司が“ねぎらう”こと。「大変なのに良くできたな」「君に任せて正解だったよ」などの一言を加えるだけで十分です。上司自身に似たような経験があったなら、それを踏まえて何かしら良い点を認めることで、さらに効果的になります。これが、中間管理職のやる気を引き出す一歩です。逆に、中間管理職を板挟みにしている他方の部下サイドから“ねぎらい”はどうでしょうか。例えば、社員一人一人がその1日を振り返り、社内で「助かったこと」「嬉しかったこと」などの感謝の言葉をカードに書いて、その人に贈ることを朝礼に導入した企業があります。そこでは、中間管理職が面倒を見ている部下から感謝の意を日常的に受けることができ、中間管理職は部下の良かったことを「褒めたいこと」として伝えることができています。通常、中間管理職を下からねぎらうのは難しいことですが、このような仕組みや社内イベントを導入することで、中間管理職と部下の人間関係をスムーズにすることができ、中間管理職と部下両方のやる気を育てることができています。 同じ境遇の中間管理職が集まる会議の活用 中間管理職が一人で悩みを抱え込んでしまうと、ストレスを誘発する大きな要因となってしまいます。それを防ぐのに有効な方法の一つに、中間管理職が集まる会議の活用があります。そのために、新たに会議を設定する必要はありません。これまで売上報告など、事務連絡を行っていた会議に、機能を1つ追加してください。同じ中間管理職の悩みや苦労をしている “仲間”同志で相談し合える場として活用できるようにするだけです。あるショッピングセンターでは、様々な業種や規模の店長が集まる店長会議で、それぞれの店舗での問題点や改善点を発表する機会を設けています。お互いに悩みを話すことで個々のストレスを軽減し、他の店長の悩みを皆で考えることで新たな気づきを得て、自分の店舗で試す動きができています。悩みを同じ立場の“仲間”に話すこと、みんなで共有することで、悩みを解決するヒントを得るだけでなく、「自分だけじゃない」という共感と連帯感は、中間管理職のストレスに立ち向かう力になります。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

仕事を任せることで人材育成

社員のやる気を引き出すには 4

社員との価値観は時代と共に変わり、若い世代との考え方の違いはいつの時代にもあります。そして、どうしたら社員がやる気を出してくれるのか、マネジメントする側の悩みは普遍的にあります。たとえ時代や社員の価値観が変わったとしても、やる気を引き出す近道はなく、その最も効果的で根本的な方法は、社員自身が仕事を成し遂げたことの喜びを実感することに他なりません。とはいえ、仕事を任せることは、ある種の勇気と覚悟が必要です。ここでは、どのように仕事を任せていくべきなのかを考えていきましょう。 “失敗することを前提”に仕事を任せる 仕事を任せていないのは、社員を思う、案ずる気持ちが要因のケースも少なくありません。親心から心配してつい口を出してしまいがちなのです。しかし、それは部下にとってはアドバイスというより、上司からの指示でしかありません。社員の中には 、“自分の仕事”というより“やらされている仕事”という認識が生まれています。そうなると、社員は自分で考えなくなり、常に指示待ちをする受け身の社員となってしまいます。また、社員が自己成長していないので、従来以上の新しい取り組みや試みは生まれてきません。企業の生産性を上げることはないのです。最も任せやすい仕事の一つに、既存の定番業務があります。しかし、この場合、仕事を任せるとこれまでのやり方をうわべだけ真似て行うことが多く、結果としてお客様に迷惑をかけるケースも少なくありません。しかし、この失敗では、既存業務だけに前担当者としてフォローしやすい点が多く、社員もフォローしてもらうことで学ぶことが多いものです。さらに失敗をフォローすることで、双方の間に信頼関係が生まれることにつながります。要は、失敗することを前提に仕事を任せることがポイントなのです。 仕事を任せるには“対話する姿勢”が必須 仕事を任せるといっても、社員を放任したり、社員の仕事を放置したりするとは違います。仕事を任せたとしても、社員に対する日常のフォロー、ケアは必要です。ただし、それは仕事の指示をするのではなく、部下との対話する機会を増やすことです。対話というと、業務をストップさせてしまい、フォローとして回りくどく感じるかもしれません。対話では、あくまでも、社員の視線にあわせて一緒に問題を考えることで、社員に気づきを与えて成長を促します。このステップでヒントを得て、任された仕事を自分なりに改めて考えて、引き続き仕事を遂行することで、この社員が自発的に成長していくことが重要です。この成長が社内のいろいろな部署で、年間を通じてポツポツ発生することで、相乗効果や連鎖反応となって会社自体の成長にもつながっていきます。とはいえ、対話は実に難しいものです。頭で理解しているものの、つい親心からアドバイスを超えた指示を、フォローを超えて前に出てしまうことに陥りやすいものです。これでは、社員の成長も双方の信頼関係も生まれてきません。グッと抑えて対応することが求められます。“対話する姿勢”とは、仕事の進捗を確認して、社員には気にかけてもらっているという認識程度に留めておくことがベストな状況で、社員が実際に困った時には、すぐに相談してみようと思わせる環境を作っておくことが大切なのです。そして、社員の相談を受けた場合は、自身のノウハウやできる限りのフォローを行い、しっかり社員をサポートしてあげてください。マネジメント側がこの姿勢を貫くことで、社員との間に信頼感が築かれ、社員のやる気を引き出すことになります。