- 2020.01.13
- 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜
他社導入成功事例(1)
生産性を向上させるメンタル対策 6
-A社社員数・200人製造業メンタルの原因を解決して3000万円コストダウンに成功-
A社は大阪に本社を置く日用品販売の百貨店に商品を納品している製造業の企業です。数年ほど前から、不良品による返品が非常に多くなり、社長から数年前から「全社を挙げて不良品を減らせ!」との大号令のもと取り組んできましたが、一向に減りません。
トップから厳しく叱責される日々が続き、社員は萎縮している様子でした。そのうち、品質検査の部署や工場の工程管理をする部署、営業部、などにメンタル不調者が現れ始め、他部署にも高ストレス者が増えてきました。
そんな時弊社との出会いがあり、トップからの依頼で全社員に対し、1人約30分のストレス面談を実施することになりました。
1)扁桃体興奮を鎮めることからスタート
まず、なぜ不良品が多いのかを質問する前に、今の気持ちを明確にするということを行ったところ、相当数の社員が「どうにもできなくて苦しい」「どうせ無理」「もっと大きなミスが起きるのではないか」「社長が怖い」など、強い不安やあきらめ、苦しさを抱えていることが明確になったため、まずはマイナスをゼロにするというセラピーを行いました。この段階で感情の発生装置である扁桃体興奮を静めることに成功すると、前向きな方向に発想が進みます。
次に何が原因だったと思うか、と言う視点で「周囲の原因」と「自分の原因」の話を聴いていきます。すると、多くの社員に遠い昔の記憶がよみがえってきました。それは10年ほど前に、トップから「全社を挙げて今まで以上に返品率を下げること!」と指示が下った時のことでした。その時を境に逆に返品率が上昇したのです。
そしてわかったことは、その時を境にして「個別商品を入れている外箱の傷をも、不良品として扱われ返品されることになった」ということでした。
店頭で陳列されている個別の商品は、個別の箱に入れられています。そして12個ごとに外箱に入れられ、販売会社に納品されているのです。外箱とは、個別の商品を守るためのものなので、外箱が傷ついても中の個別商品が傷ついていなければ本来問題ないわけです。
しかし、なぜか外箱の傷をもいつのころからか「不良品」と認識され、返品されるようになってしまい、年数がたつにつれこれが慣例となってしまっていたのです。私が推測するには、社長の指示を必要以上に厳格に守ろうとした当時の関係部署の担当者たちが、必要以上の判断を下してしまったということなのかもしれません。
「外箱の傷は不良品ですか?」
こういう疑問を挙げた社員の声が多かったため、面談記録をまとめその会社の社長と販売会社の社長に確認したところ、「それは問題ない」との回答でした。
この問題なくなり、今まで行っていた不要な仕事が大幅になくなりました。不良品は今まですぐに再納品しなければならなかったため、いったん工場のラインを止めスケジュールを作り直し、材料を再手配し残業して納品します。ものすごく無駄なコストがかかっていたのです。
これらの手間がなくなり結果として年間3000万円のコストダウンに成功しました。
メンタル対策、コストダウン、時短、働き方改革、従業員満足向上、職場改善などが一挙に成功したのです。
すべてが終わり、社長とお話ししていた時の言葉が印象的でした、
「そんなことで悩んでいたのか」
そうなのです。社長から見ると「そんな程度のこと」で社員は悩みストレスに陥り、結果として無駄なコストがかかっていたのです。
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執筆者:山本 潤一
日本メンタル再生研究所・所長
「あるがままの自分らしさを表現することで、幸せに生き働く人を増やす貢献をし、皆が豊かになれる
社会を作る」をミッションとしている。
個人の幸せな生き方・働き方支援を行うメンタルプロフェッショナル。
ヘルスカウンセリング学会公認心理療法士、キャリアコンサルタント。
元東京医師会医院
著書・「医療福祉の現場で使える、心が通い合う会話術(日総研出版)
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