社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

社内で事例共有する

社員のやる気を引き出すには 7

ビジネスシーンでの基本ルールに『報・連・相』がありますが、社内で事例共有することは、これを具体化することに他なりません。まさに、仕事が完了した際や半期・年度単位で“報告”する、仕事の成果や進捗状況を社内全体に“連絡”する、発生している課題を“相談”する施策です。
それでは、事例共有がどのように社員のやる気を引き出すのかを考えていきましょう。

事例共有の“報告”効果 社員を“ほめる”ネタを収集できる

まず、社員の視点で見ると、報告レポートを書くこと自体、自分の仕事内容と成果を自身で振り返ることになり、仕事の進め方を見つめ直し、「どこが勝ちパターンなのか」「ここを直せばもっと良くなるのではないか」という分析を行う良い機会となります。仕事をやりっぱなしではなく、次につながる足がかりにすることができるのです。また、その報告レポートは事実や経過を報告するだけでなく、社員が会社に対して自分をアピールする場にもなります。
反面、会社の視点で見るとどうでしょう。社員の報告を受けることは、社員がどこでつまずき、どう対処したか、数字だけではわからない苦労と工夫、チャレンジを把握できる仕組みとなります。そのため、社員のやる気を引き出すのに最も有効な“ほめる”ための情報収集できる仕組みといえます。
指示した業務の進捗を報告させることで、会社としては全社員の業務の状況が把握でき、会社全体の状況を把握できるだけでなく、会社として新しく伸びる可能性を発見できることにもつながります。

事例共有の“連絡”効果 社内で評価し合いノウハウ化する

この効果を上手く活用できているのが、居酒屋のチェーン『塚田農場』を運営する株式会社エー・ピー・カンパニー。この会社では、店舗で提供した料理の際に出た鳥の油を活用して一口チャーハンを作りメッセージを添える、お薦めのトッピングソースを小皿で提供するなどの『小さなサービス』が好評です。このサービスを若い女性が中心のパートやアルバイトに考える段階から委ねて、実践したアイデアを社内のインフラで報告してもらい、全店舗で共有する仕組みを導入しています。インフラに載せられたアイデアは、他の店舗のスタッフも見ることができ、他の店舗でも実践してみてどうだったか、評価を戻すことができます。これにより、報告した自分のアイデアが、全店舗で評価され“いいね!”形式で認めてもらうこと、それが結果的に、正社員の2倍以上いるパートやアルバイトのやる気を向上させ、チェーン全体での接客サービス力のアップにもつながっています。
このように、社員の仕事を社内に“連絡(アナウンス)”することは、全社的にその社員の功績を讃えることにつながり、当事者の社員にとって全社的に自分をアピールできる機会を得ることになります。
また、同時に「どうすれば会社に認められるのか」「どういうことで全社的に評価されるのか」を学ぶ場としても活用できます。共有される事例をみる→事例を改良して実行する→クライアントの満足を引き出すというサイクルを創り出すキッカケになります。さらにこのサイクルを創り出すことこそが、社員が自ら学んで実現する『前向きな社風づくり』となります。
そして最終的には、連絡し合った事例を評価し体系的に分類することで、その会社のノウハウとして構築でき、企業ブランドを高めることになります。

事例共有の“相談”効果 失敗を活かして次につなげる

成功事例だけでなく失敗した事例こそ、会社の資産となると考える会社もあります。失敗した原因を追究する仕組みや体制が、次の失敗を防ぐ最善の対処法になりえると考えているからです。そのため、この考えの会社では事例を収集するだけではなく、集められた事例を分析して、その原因を徹底的に追求するための機能を持っています。
例えば、ある大手プロダクションでは、「無理、ロス、トラブル」を無くすることをミッションに『MLT研究会』を立ち上げ、全社の失敗や事故、トラブルが起こった事例の情報を早急に吸い上げる体制を取っています。この研究会ではその原因を追究してその対応をルール化して、全社にアナウンスするまでが業務です。社員からすれば、トラブルが発生した事例を研究会という社内の専門集団に相談できる体制ともいえます。
また、ある情報システム会社では、失敗を報告するとお金がもらえる仕組みを導入しています。これは、ミスや失敗、事故が会社に報告され、顕在化されやすい体制をつくりことに他なりません。トラブル発生時には「自分の失敗を隠したい」「自分で何とかしたい」と考える社員は少なくありません。しかし、報告せずに担当だけで悩み、誰にも相談しないまま時間だけが経過するのは、状況がますます悪化する要因となります。失敗を隠す、自分だけで何とかしようとすることは、かえってミスが大きくなり、大きな損失につながります。要は、社員が早く失敗を報告して相談できる環境に作り替えることが大切なのです。
このような環境づくりが、失敗を報告することや相談することに対する社員の「自分の評価が下がるかも」「ペナルティがあるかもしれない」という心配を小さくして、失敗を恐れず仕事に思い切り取り込めるように促します。

執筆者:松宮 洋昌

株式会社イベント・レンジャーズ代表取締役。
「シャカイの課題」や「カイシャの課題」をイベントを通じ解決することをミッションとしている。
「シャカイ」や「カイシャ」の課題の多くは。コミュニケーションの問題によるところが多い。
経営の想い、社員の想いなどをイベントを通じ共感することで、組織が劇的に成長することも多い。
そんなイベントのデザインを得意とする。