- 2020.01.13
- 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜
ストレスで生産性を向上させる
生産性を向上させるメンタル対策 2
1)ストレスには法則性がある
弊社顧問で、筑波大学名誉教授でありストレス科学者である宗像恒次博士は、ストレスについて次のような法則性を発見しています。
ストレス=f(D.P.S)定義・宗像恒次
D=Demand(要求)
P=Predictability(見通し)
S=Support(支援)
ストレスとは、要求、見通し、支援の3つの要素で構成されており、これらの3つの要素がどの程度あるかによって、ストレスは悪いものにもなるし良いものにもなるというものです。たとえば、仕事とは必ず求められるものがあります。これがDです。そしてそれに対して「見通しを持てているか(P)」、支援者を持てているか(S)によって、そのストレスの意味合いが変わるということです。
例を挙げると、D↑P↓S↓の時、このストレスは悪いものになります。やったことにない仕事を命じられ(高いD)、見通しが持てず途方に暮れ(Pがない)、しかも応援者は誰もいない(Sがない)状態であれば、誰もが逃げたくなります。メンタルダウンとは、このような心理状態が長引くことで引き起こされるのです。
一方、D↑P↑S↑の場合はどうでしょうか。やったことのない仕事を命じられるが(高いD)、前任者が残した詳細な実施マニュアルがあり(Pがある)、しかも上司が細かく相談に乗ってくれる(Sがある)としたら、それだったら頑張ってみよう!と思いませんか?どうでしょうか。ストレスとは扱い方によっては、その人を成長させる方向に向かわせる良いものになるという意味が伝わったでしょうか。
2)成長課題に直面していると見る
私は医療を否定しているわけではありません。先ほど説明したようにD↑P↓S↓の状態にあって、不幸にして本人も長い間途方暮れ、周囲も長期間ほったらかしの状態にしておくと、そのうち夜が眠れなくなり起き上がれなくなったり本当に体調がおかしくなるでしょう。その場合は、お医者さんに行くことが大事です。
しかし、D↑P↓S↓の高ストレス状態に陥ったからと言って、すぐにお医者さんに行け、などと促すような風潮が今のストレスチェックにはありますが、これは明らかに行き過ぎです。その人の「成長の機会」を奪ってしまうからです。
これでは企業の中で、スマイルジャパンのメンバーのように物事に挑戦していく人材などいなくなってしまうでしょう。経営者はこういうことを望んではいないと思います。
その人が成長のための「課題」に直面していると捉えるのがストレスに対する正しい向き合い方です。そしてその人の能力をよく見て「高すぎる要求」、逆に「低すぎる要求」を適正化し、要求に対する「適切な見通し」を与え、「十分な支援」を与える、ということが重要です。
つまり、こういう仕事があるからやれ!と人を一律なものと見て部下に指示していたのが今までの仕事のやり方でしたが、そうではなく、人の個性差、能力差をよく見てそれに合わせて導いていく、という「ヒト」主体のマネジメントをしていくことが重要で、だからこそストレスをモティベーションに変えられ、従業員満足が向上し、生産性が向上し、働き方が変わり、売り上げが向上し、時短が実現するのです。
ストレス、メンタル対策をとりながら、同時に企業に経済効果を与えていく事ができるのです。
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執筆者:山本 潤一
日本メンタル再生研究所・所長
「あるがままの自分らしさを表現することで、幸せに生き働く人を増やす貢献をし、皆が豊かになれる
社会を作る」をミッションとしている。
個人の幸せな生き方・働き方支援を行うメンタルプロフェッショナル。
ヘルスカウンセリング学会公認心理療法士、キャリアコンサルタント。
元東京医師会医院
著書・「医療福祉の現場で使える、心が通い合う会話術(日総研出版)
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