社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

長時間労働の是正

成功する働き方改革 2

働き方改革についての議論が活発です。何のために、今、「働き方改革」なのでしょうか。この原点を忘れてしてしまうと、企業経営がおかしな方向に行きかねない危険性があるので要注意です。
こんな記事が配信されていました。
※livedoor NEWS『「残業厳禁」を1年間続けた結果「他人の仕事を手伝わなくなった」
その会社では、「サービス残業・休日出勤・持ち帰り残業も厳禁」というルールが1年前から導入されたそうです。1年経って職場に3つの変化が起きたと報告されています。

  1. 「『余計な仕事」』をしなくなる、命令できなくなる」
  2. 「ボトムアップからトップダウンになる」
  3. 「会議・ミーティングが減る」

対話の量が減り、現場の声が届きにくくなり、将来の種まきがなされなくなってしまったということです。これは最悪です。「働き方改革」によって職場の健全性が向上し、持続可能性が高まらないのであれば、本末転倒の結果といえるでしょう。
この会社では、残業厳禁となっても仕事量は変わらず、かつ増員配置もされなかったとのことです。そのため「仕事の量は変わらないし、締め切りも変わらない。だから、皆『余計な仕事』を減らすようになる」「余計な時間の仕事は全て悪なのだから、時間のかからないように仕事をしなければいけないし、そのように命令しなければいけない」と思考して、それに応じた行動をしていったと報告されています。

長時間労働の是正には、業務量調整が必須事項

残業時間と利益率の相関関係はありません。ですから、目標としている時間短縮をして、現状の利益率を確保するための業務量の調整は必ず検討しておくことが必要でしょう。長時間労働となっている原因を明らかにしないで時短に走ると、この事例のような現象が出かねません。原因分析のポイントは以下のとおりです。

対顧客

  • 利益貢献の低い顧客に社内の労働時間が割かれていないか
  • クレーム処理の時間が多すぎないか

社内体制

  • 非効率的な仕事の進め方が恒常化していないか
  • 人員配置の適正性はどうか
  • 相互信頼のある組織風土は育っているのか

時短の前に、これらの課題について、現場の意見をふまえて、しっかりとした議論を重ねていくことが求められます。

社員が納得した状態で改革を進めることが肝要

現状分析をしたうえで、必要な対策を講じて時短を実施しないと、社員の納得感は当然得られないでしょう。例えば、顧客との取引内容の見直しや、場合によっては解除の検討、あるいは配置換えや新規採用といった人事面での改善も必要になるかもしれません。
こうした事前の全うな努力が、会社に対する信頼を増進させるきっかけになることも確かでしょう。「働き方改革」によって社員のモチベーションが上がるのでなければ、その施策は失敗といえるのです。
上記の事例では、いきなり残業ゼロにする前に、段階的に時短していく方法もあったかもしれません。何にしてもそうでしょうが、バランスを欠いては物事は長続きしません。
人本経営を志そうと決めたある会社の経営者は、まだ週休2日もなっておらず、土曜日は不定休という現状で、とても月の残業時間を減らすのは無理だと感じました。しかし、出来ることからということで「第一土曜日は固定休日とする」と決めたそうです。それだけのことでも、社員が明らかに喜んでいるのがわかったと感じたそうです。それでいいのです。少しずつ社員が喜ぶ方向へ「働き方改革」を進めていくことが大事です。それを繰り返していくうち、「お互い様」という大切な風土が培われていくのです。

執筆者:小林 秀司

株式会社シェアードバリュー・コーポレーション代表取締役。
人を大切にする「いい会社」づくりのトータルプロフェッショナル。内閣府認定
「地域活性化伝道師」。
社会保険労務士。法政大学大学院中小企業研究所特任研究員。企業内で行う「社風をよくする研修」
の実践を得意とする。また行政機関でも多くの講演実績がある。
著書に「人本経営」(NaNaブックス)、「元気な社員がいる会社のつくり方」(アチーブメント出版)等がある。