社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.12
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

人間関係の質をよくしていくことが組織の健全な成長の源

やらされ感のない職場を作るには 4

繰り返しになりますが、人本経営が形づくられるためには、職場での相互信頼に基づく人間関係がとても重要です。そのためには利己的ではなく利他的な対人関係をつくっていくことが求められます。この利他ということは、奥が深く、実践することはそう簡単ではありません。マズローも「自己超越」は最も上位の概念として指摘しています。どうすれば利他が実現していけるのでしょうか。

成功循環モデルを意識して行動する

マサチューセッツ工科大学 のダニエル・キム教授は、組織の成功循環モデルを 提唱しています。
組織で活動していく場面では、そこに関わる構成メンバー(会社でいえば社員)一人ひとりが思考して行動を起こしていきます。そして、その行動が成果という結果を生み出しています。日々、このことを繰り返していく訳ですが、この結果は組織内の人同士、あるいは組織と人との関わりの質が大きく影響を及ぼしているとキム教授は唱えています。

組織内での関係性、すなわち組織に対するコミットメント、上司と部下、メンバー同士、社員と関係会社、そして社員と顧客など、これらの結びつきがよければよいほど、思考の質が良くなってくるということです。

関係の質が結果を左右する

例えば、上司と部下になんでも言える関係性があって、部下から提案をすると上司はきちんと傾聴し、受け入れていくという信頼関係があれば、部下はさらに役に立つためにはどうしたらよいか思考の質を高めていきます。
そうすると、その高められた思考から行動の質も高められていきます。今の自分では、今考えていることを実現するのは難しいから、学習して能力を向上させていこうと行動していきます。努力の末、今まで出来なかったことが出来るようになり、提供する仕事のレベルが高くなっていきます。そのレベルの上がった仕事に、顧客は「そこまでしてくれるのだ」と感動し、満足度が高められていきます。結果として、その組織とのロイヤリティが高まっていきます。
逆に、お客様の声をもとに「こうしたほうがいい」と何度提案しても、上司からリスクばかりを気にして却下され続けてしまうと、部下は「どーせ言っても無駄だ」と深く思考することをやめ、言われたことだけをこなしてればいいと行動が後ろ向きになっていきます。そんな状態で顧客と接していけば、それに応じた結果しか伴わないということは自明です。やがて顧客からも期待されなくなり、失注していきます。結果が出ないことを咎められ、ますます関係性が悪くなっていくと、社員の離職が繰り返され、組織は疲弊していきます。
人間関係の質をよくしていくことが組織の健全な成長の源にあるとキム教授は指摘している訳です。ここに利己ではなく利他の重要性があるのです。

執筆者:小林 秀司

株式会社シェアードバリュー・コーポレーション代表取締役。
人を大切にする「いい会社」づくりのトータルプロフェッショナル。内閣府認定
「地域活性化伝道師」。
社会保険労務士。法政大学大学院中小企業研究所特任研究員。企業内で行う「社風をよくする研修」
の実践を得意とする。また行政機関でも多くの講演実績がある。
著書に「人本経営」(NaNaブックス)、「元気な社員がいる会社のつくり方」(アチーブメント出版)等がある。