社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

専門家を組み合わせると成功する

経営者のための『うつ社員』再戦力化法 5

うつ、メンタル対策がうまくいっている企業の特徴は、2つあります。一つ目は、今までの原稿に書いてきたように、不安、恐怖感情を発生させる扁桃体の感受性を安定化させる心理療法を散りいれて、扁対桃体を安定化させるという対策を行っている企業。もう一つはうつ、メンタル不調にかかわっているさまざまな専門家が、それぞれは何をしている人なのかをよく把握している企業であって、これらの専門家ごとの強みを上手に使い分けているということです。
よって今回の原稿では、うつ、メンタル不調にかかわる専門家がそれぞれどんな強みがあるのか、について私なりの考えで書いてみたいと思います。参考にしていただけると幸いです。

1.医師

私は医師は、うつ、メンタル不調による「病気」の状態を、日常生活が行える通常の状態に戻す、という役割を行っている方ではないかと思います。弊社顧問、筑波大学名誉教授・宗像恒次博士の研究では、うつ、メンタル不調は「周りの顔色を非常に気にする人で、自分自身の気持ち思いを率直に言えない人」がなるものです。
つまり、「自分の都合を言えない」ことによって、「助けを求められない」「アドバイスを求められない」「協力を依頼できない」「適度に断れない」「自分の都合を交渉できない」などがうつの原因です。これができないため、仕事を限界まで一人で抱え、ある日突然バタっと倒れ、夜が眠れなくなって気力体力が消耗し、日常生活が送れないほどの病的レベルに陥り、本格的にダウンするのです。
こうなったら病的レベルなので、お医者さんに行って薬をもらい、夜が眠れるようにしてもらうとよいと思います。そうするとだんだん気力体力が復活してきて、日常生活が送れるようになってくることでしょう。
ところが先に書いたように、うつ、メンタル不調はそもそも「周りの顔色を気にしすぎる」という本人の性格的に敏感すぎる問題から作り出されるので、病的レベルが回復し、日常生活が送れるようになってからも、相変わらず休職していたり、薬を飲んでいたりしても性格が変わるわけではないので、そのまま復職してもまた再発してしまいます。現在、多くの企業で再発を止められないという状態に陥っていますね。性格を変える、私たちは性格再構築支援と呼んでいますが、これを行う事が必要でこれはプロ心理療法士が専門とする仕事なのです。

2.産業医

産業医は、うつ、メンタル不調の人が職場でしっかりパフォーマンスを発揮できるのかを面談して判定する人であって、多くの場合、うつ、メンタル不調を解決するためのソリューションを提供する人ではありません。
企業に行くと、時々経営者やメンタル担当者が「うちは産業医がいるからメンタルは大丈夫です」とおっしゃる方がいるのですが、これは何か産業医をうつ、メンタル不調を解決するソリューションを実施してくれる人と誤解していないかな、と感じることがあります。もちろん非常に少ないとは思いますが、そういうことをできる産業医の方もいることでしょう。しかし、私が今までお会いしてきた中では、そのような産業医の方はほとんどおられません。
しかし一定の規模の事業所には産業医がいなければならない存在になっていますので、そういう意味では、解決する人また別の役割の人を上手に使いながら、仕事ができる状態かどうかを判定するという役割を産業医を担っていただくというお付き合いの仕方がが大切と思います。

3.様々な心理療法の方々の役割

1)傾聴カウンセラー

相手の話をありのままに聴き共感する、と言うカウンセリングを行うカウンセラーです。弊社も‘90年代の中ごろにはよく行っていました。うつ、メンタル不調の方は「わかってほしい」という気持ちが強い方が多いので、話を聴く、と言うカウンセリングはうつ、メンタル不調の方々を大いに満足させました。
ところが、いくら話を聴いても一向にうつ、メンタル不調は解決しないのです。私の経験では、話を聴くカウンセリングというものは、その時は気持ちを満足させるものではありますが、そのことでうつ、メンタル不調の方々の「周りの人との顔色を非常に気にするという繊細な性格」を改善する事にはつながらなかったと感じます。しかし、苦しみを一時的に緩和することにはつながるので、疲れ果てている人を一時的に楽にしてあげるような使い方が効果的ではないかと思います。

2)認知行動療法カウンセリング

このカウンセリングも弊社では‘90年談後半にはよく使っておりました。認知行動療法とは、うつ、メンタル不調の原因はその人の「認知のゆがみ」にあるとして、ゆがんでいる認識を発見して修正していくというものです。たとえば、コップの中に水が半分あるとして、うつ、メンタル不調の人はマイナス思考の人が多いので、「もう半分しかない」ととらえがちです。しかし、「まだ半分もあると考えることもできませんか」と投げかけ、認知の偏りを修正していくのです。
私の経験では、うつ、メンタル不調が非常に軽い人の場合は、こういった考え方の視点を変えることで「なるほど」となることもありますが、多くのうつ、メンタル不調の方はどうしても不安や怖さの感情が強いので、頭ではそう思ったとしても、どうしても感情的に納得できないということが起こります。
気づきを起こさせるには良いですが、本格的にうつ、メンタル不調を解決するには、「考え方のゆがみを変える」のではなく、「感じ方のゆがみを変える」必要があると思います。
感じ方のゆがみを変えるには認知行動療法ではなかなか難しく、次の3)で説明するように弊社が‘90年代後半から行っている、「扁桃体を安定化する」という心理療法を行う事が効果的です。

3)弊社が行っている脳科学心理療法

これは、「感じ方」を決めている、脳内の不安、恐怖感情の発生装置である扁桃体を安定化する心理療法のことで、不安や恐怖感情を消失させ、うつ、メンタル不調を解決へと導く効果があります。某上場企業では初回うつ休職者の再発率3年半0%と言う結果に貢献しています。
ただ短所は、本人に解決意欲が低いとうまく効果を発揮しないということです。うつ、メンタル不調が病的レベルにまでなっていると、気力体力まで消耗し解決意欲が全く出てこない人がいます。こういう場合は、まずはお医者さんに行って薬をもらってよく寝て、気力体力を回復させることが重要です。
または、傾聴カウンセラーなどに話をたっぷり聞いてもらうことで、モティベーションを高めることが重要だと思います。
意欲が向上してきたら、うつ、メンタル不調は本人の敏感すぎる扁桃体の感受性が作り出しているという課題はありますから、その課題解決をするということで、脳科学心理療法を受けていただければ約15時間前後で、うつ、メンタル不調を消失させることが可能です。

以上のように、専門家はそれぞれ少しづつ得意とする分野が異なりますので、経営者やメンタル担当者はこのことをよく知って、使い分けることが一番メンタル対策では重要と思います。

執筆者:山本 潤一

日本メンタル再生研究所・所長
「あるがままの自分らしさを表現することで、幸せに生き働く人を増やす貢献をし、皆が豊かになれる
社会を作る」をミッションとしている。
個人の幸せな生き方・働き方支援を行うメンタルプロフェッショナル。
ヘルスカウンセリング学会公認心理療法士、キャリアコンサルタント。
元東京医師会医院
著書・「医療福祉の現場で使える、心が通い合う会話術(日総研出版)