社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

メンタル不調多発に学ぶこと

メンタルケアを実践するには 1

現在、どの企業でもメンタル不調者が多発していることはすでに周知のことです。すこし古いですが日経新聞の2012年10月10日の報道によると、WHO(世界保健機関)の発表では世界では少なくとも3億5千万人がうつ病であるとみられているとのことです。
全人口を約70億人とすると約5%です。この割合を日本にあてはめると、人口を1億2千万人として約600万人に相当します。企業の中で休職者の割合は約1%と言われますが、休んでいなくてもメンタルの調子が悪そうな人を考えると、5%くらいいてもあながち大げさな数字とは言えないのではないでしょうか。
今後もますます増えるであろうメンタル不調ですが、今までずいぶんたくさんの薬が発売されてきましたが、さらにますます増えており、これまでのような対処法ではもう無理な状況です。メンタルに対する考え方を根本から変えることがスタートなのではないか、というのが本稿で提言したいことなのです。

今までの生き方、働き方が合わなくなっている

では、なぜこんなにメンタルが発生するのだろうか。それは21世紀の時代に、今までの20世紀的な生き方、働き方が合わなくなったからです。合っていないのに、しかしどうしたらよいかわからずに20世紀的な生き方働き方を続けてしまっているから、全世界的にこんなに苦しんでいる人が増えているのです。こういった考え方をご紹介していきましょう。
「人本経営」とは、働く人(経営層を含む)やその企業にかかわる人の「幸せ」を充足することから始めよう、ということが根本になっています。その企業にかかわる人の内面の「幸せ」を満たすと、おのずとお客様に貢献しようという気持ちが自然と高まってきて、結果的に顧客満足が高まり、ビジネスは好循環することで収益は上昇する、という経営手法です。こういうやり方で現在、多くの企業の収益が改善されています。
この考え方を一個人に当てはめると、自分自身をまず「幸せ」な気持ちで満たそう、ということになります。まずは自分自身が幸せだなあと感じる生き方・働き方をしているとどうなるでしょうか。少なくとも、メンタル不調になる人はずいぶん減ることでしょう。また他者にもっと貢献しよう、他者に親切にしよう、といういわゆる「利他の心」が無理なく自然にもわいてくることでしょう。

社員自身が満たされていない可能性が高い

問題は、今、私たちが実践している生き方、働き方はそもそも私たち自身を幸せな気持ちにさせているのか、ということなのです。一個人で考えると生き方・働き方というのは、会社から与えられるという側面もありますが、基本的には自分自身の問題です。基本的に自分自身に選択権があるのです。私たちは「幸せだなあ」という気持ちで、毎日を送っているのでしょうか。働いているのでしょうか。
おそらく、そういう気持ちの人は非常に少ないでしょう。だからこそこんなにメンタル不調の人が多発するのです。現在、メンタル不調になっていなくても、なんとなく面白くない気持ちで毎日を送っている人まで入れると非常に多いのでないでしょうか。日本人ビジネスマンは国際的に比較すると、非常に幸福感が低いという調査結果もあります。もし、そうだとすると、自分自身が満たされていない可能性が高いのですから、その心理状態のままで仕事を行おうとすると、言い換えるとビジネスの基本である他者貢献(利他行動)を行おうとすると、いつかガス欠となり燃え尽きてしまうということです。
これは企業単位で考えるとわかりやすいかもしれません。つまりES(従業員満足)が満たされていないままで、全力でCS(顧客様満足)を高めなさい、と命じるといつか社員は燃え尽きて疲弊してしまいます。
では、なぜ私たちの生き方・働き方はこうなってしまったのか。そしてどうしたらよいのか。この大きな課題について少しづつ考えていきましょう。

執筆者:山本 潤一

日本メンタル再生研究所・所長
「あるがままの自分らしさを表現することで、幸せに生き働く人を増やす貢献をし、皆が豊かになれる
社会を作る」をミッションとしている。
個人の幸せな生き方・働き方支援を行うメンタルプロフェッショナル。
ヘルスカウンセリング学会公認心理療法士、キャリアコンサルタント。
元東京医師会医院
著書・「医療福祉の現場で使える、心が通い合う会話術(日総研出版)