社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

強い社員を育てるには

メンタルケアを実践するには 3

前回の原稿では、周りの評価を気にする「他者報酬追求型」の生き方・働き方が、メンタル不調を作り出す、ということを書きました。
仕事の場合、他者に評価していただいて報酬を得るわけですから、他者評価を気にするなと言われると、どういうこと? と思われるかもしれません。
お伝えしたいことは、順番を変えましょうということなのです。「自分自身を満たす(自己報酬)」ということをまず最初に繰り返していくと、実力や実績が身に付き、その次に自然とお客様の評価(他者報酬)が得られるようになるのです。
この順番を間違えるとどうなるかというと、とにかく今すぐ売り上げがほしい!=すぐに評価されたい!(他者報酬追求) となり、自分自身に実力もないのに無理なことをしてメンタル不調になったり、相手に無理なしわ寄せが行って評価を落とす(その結果、メンタル不調になる)ということになってしまうのです。

トップが「自己報酬追求型」の生き方・働き方に変わることが最も重要

実はすこし深い話をしますと、実は私たちの中に存在する「他者に認められたい」という欲求は非常に根深いものがあるのです。何故かというと結論を言うと、親の影響を大きく受けているからです。
たとえば私たちの親の世代の多くは、非常に世間体や他者評価を気にした方々が少なくありませんでした。だからこそ私たちの世代も、受験競争に放り込まれ、人より良い成績、人より良い学校、人より良い会社、人より良い肩書、人よりよい車、人よりよい住居、人より多い年収、などの「他者評価」を求める生き方がある意味、しみついている人が多くいるのです。親が世間体を非常に気にする親だと私たちも、親の顔色を非常に気にして生きるという他者報酬追求型の行動特性が強く習性として根付いてしまうのです。

経営者の中には、売り上げをとことん追求する方がいます。規模拡大をとことん追求する方もいます。これが必要なときもあると思います。
しかし、一方で時によってはこれは他者に認められたいという、強い他者承認欲求、裏返せば愛情飢餓感(自分は認められていないという気持ち)から作り出されているため、弊害を生む場合があることも少なくありません。
私は今まで数多くの経営者のメンタルセッションを行ってきましたが、経営者自身のものの考え方が親子関係の影響から来ている場合が非常に多いのです。
売り上げ拡大・規模拡大がうまくいっていても、経営者自身に「認められたい欲求」が強すぎるとき(認められなかった気持ちの裏返し)、常に焦燥感、不安が強くなり不安定な心理になります。そしてそのストレスは間違いなく、社員に向かうのです。すると社員は間違いなく経営者の顔色を見て仕事をするようになり(他者報酬追求型)、顧客のほうを向かなくなります。メンタル不調者が続発するようになります。社員が自発的に動かないとすると、それは間違いなく経営者が醸し出す雰囲気の影響を受けています。

「経営者自身の心の変化は敏感に社員に伝わります」

私はよく経営者の方にお願いすることがあります。それは「業績を向上させたかったら、親と和解し仲良くてください。それが経営者の心の認められたい欲求を満足させることになり、その結果、経営者の心が安定するのでそれが社員の幸せを向上させ、CSを向上させることにつながるのです」
経営者の心の変化は敏感に社員に伝わります。経営者自身が「自分自身の欲求を満たす」ために動いているのか、「周囲の方々の欲求」を満たすために動いているのか。これは如実に雰囲気で伝わります。
頭でわかっていてもなかなか実践するのは難しいなとお感じになる方には、私が行っているメンタルトレーニングが「自己変革」のお役にたつと思います。
今回は経営者自身に焦点を当てましたが、次回は社員自身が、自己報酬追求型に変わっていけるようになるための方法について書きたいと思います。

執筆者:山本 潤一

日本メンタル再生研究所・所長
「あるがままの自分らしさを表現することで、幸せに生き働く人を増やす貢献をし、皆が豊かになれる
社会を作る」をミッションとしている。
個人の幸せな生き方・働き方支援を行うメンタルプロフェッショナル。
ヘルスカウンセリング学会公認心理療法士、キャリアコンサルタント。
元東京医師会医院
著書・「医療福祉の現場で使える、心が通い合う会話術(日総研出版)