社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

メンタル対策のスタートとは

生産性を向上させるメンタル対策 1

1)「ストレス」は誤解されている

「仕事上のストレス」・・・。
あなたはこの言葉を読むと、どんなイメージを持ちますか?「つらい」「しんどい」「大変そう」「うつ」「メンタルダウン」・・・。
こんなイメージを持つ人が多いのではないでしょうか?私たちは仕事上ではストレスという言葉を、何となく悪いもの、というイメージで使っているのでないでしょうか。
2016年12月から50人以上の事業所ではストレスチェックを実施することが義務付けられました。高ストレスと診断結果が出た方が自ら手を挙げれば、医師面談を受けられるというシステムです。しかし、私が見たところ積極的に手を挙げて医師面談を受ける人は、ほとんどいないというのが印象です。
弊社とお付き合いいいただいている企業では、社員数が2000人、または3000人いても医師面談を申し込んだ人は0人です。これはなぜでしょうか?
結論を言うと「高ストレスとは、とても悪いもの」で、医師面談を受けると「あなたは悪い=病気だ」と言われると連想するからだと思います。医師面談を希望するとなると、わざわざ「自分は病気だ」と周囲に公表するようなもので、企業の中ではこの印象はデメリット以外の何物でもないと思うのは当然のことでしょう。

2)ストレスを正しく理解する重要性

しかし、ストレスとは本当に「悪いもの」なのでしょうか。結論から言うと、ストレスとは扱い方によっては「必ずしも悪いものではなく、人を成長させ、組織の生産性を向上させるもの」なのです。
すこし前の話ですが、全日本女子アイスホッケーチーム「スマイルジャパン」が、ピョンチャンオリンピックの出場権を勝ち取ったというニュースがメディアで大々的に報道されました。ご覧になった方も多いと思います。このチームでメンタルトレーニングを担当された山家正尚メンタルトレーナーは、私と親しくお付き合いいただいている方ですが、山家氏は次のようなことを語っておられます。
「あらゆる困難を想定して、事前にイメージの中で備えると、実践で対処できる」
スマイルジャパンがオリンピック出場権を獲得するまでの道のりで、どれだけストレスがかかったことかは想像に難くないでしょう。ストレスチェックをやれば、間違いなく全員の選手が「高ストレス」と認定されるはずです。
しかし、高ストレスだからと言ってトレーナーや監督が「すぐ医者に行け」などと言うでしょうか?言いません。なぜならスポーツの世界では、ストレスとは「自分の成長とチームの勝利のためには必要なもの」と認識されているからです。
では、ビジネスの世界ではどうでしょうか?今回義務化されたストレスチェックで「高ストレス」と判定されると、経営者、そしてメンタル担当者、そして当事者などが「悪いもの」「医者に行かなければならないもの」とイメージしてしまうということはないでしょうか?
ストレスの捉え方が完全に偏っています。企業にもそれぞれの目標があります。そして経営者をはじめ社員はその目標に向かって日々、努力しています。目標達成には「ストレス」かかるものなのです。本来悪いものであるはずがないのです。
扱い方を知らずに放っておくと悪くなりますが、正しく扱うとストレスは、ヒトを成長させ、組織の生産性を向上させるもの、なのです。
弊社がかかわっている企業では、メンタル問題を適切に扱うことで企業によっては、売り上げが向上し、大幅なコストダウンが達成され、時短、働き方改革が成功し、従業員満足が向上する、などの成功事例がたくさん出ています。
しかし、そのためには経営者や上司に「ストレスを適切に扱う手腕」が必須です。次回の原稿では、ストレスとは簡単に良いものに変えられるのだということを知っていただくために、私が企業で使っている数あるメンタル改善テクニックの中から、最も初歩的なものをひとつだけご紹介してみたいと思います。

執筆者:山本 潤一

日本メンタル再生研究所・所長
「あるがままの自分らしさを表現することで、幸せに生き働く人を増やす貢献をし、皆が豊かになれる
社会を作る」をミッションとしている。
個人の幸せな生き方・働き方支援を行うメンタルプロフェッショナル。
ヘルスカウンセリング学会公認心理療法士、キャリアコンサルタント。
元東京医師会医院
著書・「医療福祉の現場で使える、心が通い合う会話術(日総研出版)