- 2020.01.13
- 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜
感謝を伝える仕組みつくり
社内を活性化するために 3
ビジネスといえども、人と人が関わっていくことには変わりありません。そのため、仕事をオファーしてくれた顧客、ビジネスを手伝ってくれた協力会社、事業を行う資金を出してくれた株主など、仕事に関わった全ての人に感謝を伝えることは、関係を維持する意味でとても大切なことです。しかし、社員やその家族、あるいは仲間に対して感謝することを忘れてしまう傾向があります。実は会社として感謝を伝える仕組みを持っている企業ほど、社員の帰属意識が高く、「働き甲斐」を感じているケースが多くみられます。
そこで、今回は社内を活性化するために有効な、「感謝を伝える仕組みつくり」について述べていきましょう。
会社から社員やその家族に感謝を伝える
経営のカリスマ、松下幸之助氏には、伝説的に語り継がれる話があります。社内の通路ですれ違った社員一人一人の名前を言って最近の状況を聞いたという話です。感謝の言葉を社員一人一人に伝えることはなかなかできませんが、社員にとっては社長が自分の名前を憶えていてくれるだけでも十分満足できますので、それだけで感謝の意が伝わるといえるでしょう。
しかし、社員全員の顔と名前を一致させるのはかなり至難の業です。そのため、他の方法で社員に感謝を伝える方法を考えていきましょう。多くの会社で導入されているのは、創業記念日や新年会、新年度などの社内行事で、社長から社員にむけてのメッセージを発信することです。
本当は、社長の直筆で社員一人一人に向けて手紙を送る方が、感謝を伝える意味で良いのですが、なかなかそうもいきません。その場合は、花を贈ってみてはいかがでしょう。ただし、社内行事の際に社員全員に一斉に贈るのでは意味がありません。それより社員の誕生日に、あるいは既婚社員の結婚記念日にと、社員の個人的な記念日にそれぞれ花を贈る方が効果的です。感謝している度合いが個人に向いている分、より多く「自分のために」「自分の家族のために」という印象が強まり、感謝の意が伝わります。
つまり、会社が社員や社員の家族に感謝することは、一人一人の個人を認めていること。そうすることで、社員の中に「自分の会社」という意識が高まり、帰属意識が高まります。
ある会社では倒産しかけた際、社員が自分たちで何とかしなければと思い立て直した事例もあります。「最後まで辞めずに社員が社長を助ける」それほどまで、社員の想いを強くすることができるのです。それに対して、上からの強制でやらせようとしてきたケースでは、社員がさっさと逃げ出してしまいます。それどころか、某大手家電メーカーでは、上からの予算示達に対して不満を感じた社員が、内部告発して事件が公となり会社が窮地に追い込まれたことを忘れてはいけないのです。
社員から社員へ感謝を伝える会社になる
アメリカのある小学校でいじめられっ子の女子生徒が、普段自分をいじめている子も含めてクラス全員に付箋で感謝の言葉を書き、それぞれのロッカーに貼ったという記事が話題になりました。その時から、クラス全員の彼女に対する考え方が変わり、彼女をいじめなくなったという話です。感謝の言葉は人の心を動かす力があります。それを活用することで、より良い環境に変えることができるのです。
同様に、社員同士で感謝する仕組みを作り上げている会社もあります。長野県にある美容室チェーン「りんごの木」がそうです。このチェーンでは、前日にあったことで他のメンバーをほめたいこと、讃えたいことを朝礼で発表しています。例えば「トラブルが起きて困っていた時に〇〇さんが助けてくれた」とか「〇〇さんのお客様に対する接客がすばらしかった」とか、ほんの些細なことです。普段何気なく行っている自分の行動の中に、他の社員からほめられ感謝されるほどの良い点があることを知ること、どういうことが感謝されるのかがわかるので、社員自身の技能やノウハウを磨くことにもつながり、日常業務の励みになっています。
また、このように互いに認めあい、仲間意識を育むことで、社員は「ここが、自分の居場所」と感じるようになり、互いを仲間として気遣うようになります。それぞれの状況に関心を持つようになり、ますます働きやすい環境となります。そうなると、社員同士の間で、フォローが自然にできるようになり、それが会社の大きな力となっていきます。
感謝を伝えることは難しいものです。まずは、社長から社員へ、社員から社員へ感謝を伝える仕組みを取り込めないか考えてみてはいかがでしょう。
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執筆者:松宮 洋昌
株式会社イベント・レンジャーズ代表取締役。
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