社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

なぜ周年事業を行うと良いのか

会社を元気にする周年事業 1

私事で申し訳ないのですが、私の経営する会社も2017年で20周年を迎えました。これまでの道のりは決して平坦ではなかったので、20年という節目を迎えるにあたり、今までお世話になった方々への感謝の意を表していくべきではないかと考えております。
実は、この周年事業は、会社の経営サイドが、社員とその家族、取引先、協力会社とその家族、株主、地域・社会といった会社を取り巻く“5つのヒト”に対して、これまでのご厚意に感謝し、これからのご愛顧をお願いする良い機会だといえます。
そこで、私の会社で行う周年事業を事例にしながら、周年事業の役割や考えるべきこと、注意点などを整理していきましょう。

周年事業が必要となる理由で大切なポイント

まず、周年事業が必要となる理由は何なのか、考えていきましょう。
そもそも周年事業は、会社の記念日となるので、それを記念した式典やパーティなどのイベントを行い、賑やかしを演出するケースが多いものです。しかし、せっかく10年、50年、100年でそれぞれ1度だけ訪れる“周年”を、単に社内向けの記念式典だけで終わらせてしまうのは、もったいないことです。
周年事業には、行うだけの大切な意味があります。
第一に、周年事業は、これまで企業を維持することができたことへの感謝と、それを支えてきたヒトたちに感謝の意を表す良い機会となります。このヒトたちとは、先に述べた“5人のヒト”を指します。もちろん、会社の経営を仕事で具体的に支えてくれたヒトとして、取引先のお客様は大切です。しかし、その中でも最も大切なのは、会社を中から支えてくれている社員たちです。彼らに感謝することは、「これからも“共に”がんばろう」という会社からのメッセージにもなります。そして、彼ら自身の中で、会社に対して「自分の会社である」という気持ちを大きくしていきます。
そして、それと同じくらい重要なのは、社員の行う仕事を社外から助けてくれている協力会社です。彼らの助けなしでは、これまでの会社の存続ができなかったかもしれません。また、OG/OBも大切です。彼らは、社員を辞めた後も社外から企業を見守ってくれているだけでなく、昨今の不祥事には彼らの告発が発端となるケースもあります。会社への親近感が高いゆえに、応援と失望の両極端に分かれてしまう危険性を含んでおり、リスク管理の意味でも重要となります。最後に、忘れてはいけないのは、社員の家族で、彼らが社員の働く環境を維持しているからです。間接的に会社を支援してくれています。
周年事業を感謝の意を表す良い機会とするには、これらの視点を忘れずにケアしていくと、これからの会社の事業展開の支えとして大きな助けとなります。
第2に、会社は長年経営していくと、会社として今まで大切にしてきたことや、これまで行ってきたことが、薄れてきてしまう点です。会社としてだけでなく、社員でも同じで、特に若手社員に至っては知らないことが多いことでしょう。その要因は、会社の“源”を経営者としてきちんと伝えきれていないことが大きいです。ここを手薄にしてしまうと、会社と社員との溝が深くなり、仕事の質や離職率の増加などに影響してきます。かくいう私自身、日々の仕事に追われ、「なぜ今、会社があるのか」を忘れがちなので、今回の周年事業で社員に改めて伝えることで、そこを確認し合い、大切にしていくべきだと痛感しています。
第3に、会社として「これからの決意」を伝える機会となること。これは、事業を継続する上で、重要なアピールになります。社外に対しては、企業の根本的な理念でもある“ゴーイングコンサーン(企業が継続的に事業を続けること)”を実現できている企業として名乗りを上げることになります。
また、社員に対しても、会社の決意を伝えることは重要です。ともすると、資金繰りなどの経営的な視点で、取引銀行や株主対策中心となりがちですが、実は、社員への企業理念や将来のビジョンを共有することはそれ以上に重要です。この共有は、社内の結束力を強めるチャンスとなり、会社一丸となることで改めて自社の存在感・価値を示し、さらには企業ブランドの向上を図ることができるからです。そして、これをキッカケに内なる力を社外に向けて、新たな営業アプローチをすることも可能でしょう。
ちなみに、弊社がビジネスとして周年事業をオファーされた場合には、「社員の方々への感謝を第一に考えるべきだ」という考えを“核”に提案を行います。これは、クライアントの「これから」を考えていく上で、先に述べた波及効果を狙う必要があるからです。そして、弊社の実績に、これを目的とする周年事業を行うケースが多いのは、クライアントのニーズが高いからともいえるでしょう。

周年事業で果たすことができる役割

周年事業は、あくまでも会社が今後成長するための通過点です。しかし、通常の営業活動では、企業理念や将来のビジョンを発信できる機会はほとんどなく、社員にメッセージを伝える機会もなかなかないのではないのが現状です。したがって、周年事業を社内外に会社の存在意義をアピールする機会として最大限に活用すべきです。周年事業は、10年ごとに訪れる1つの節目として、これまでを振り返るタイミングというだけでなく、会社のブランド戦略の策定や、企業ブランドの強化、認知促進など経営としての大きなチャンスでもあるのです。
近年は、社会や時代の動きとして働き方の多様化が進み、終身雇用制度が揺らいでいる時代です。このような環境の中、会社のメッセージを伝えることは、非常に重要であるといえるのではないでしょうか。そして、それは働く社員にとっても重要なことです。会社に対する安心感を持ち、会社の安定を実感することができますし、社員の会社に対する帰属意識の高まりにもつながります。これにより、働きがいのある会社を構築する上で、大きな役割を果たします。会社全体で見ると、ひとりひとりの社員の帰属意識が高まることで、会社を“核”にして一致団結することになり、社内が1つになるからです。
そして、周年事業は、これまで社内で培ってきた「社風」「企業文化」「風土」を伝えるキッカケでもあります。社員に「社風」「企業文化」「風土」を伝えることができると、それが会社への理解を深めることになり、単に会社としての枠ではなく、同じ価値観を持つ集まりとして、会社と社員の関係が密になっていきます。最近の若者が就職する際の基準に、「面白そうな会社か」「働きやすそうな会社か」という視点が大きくなってきています。その価値観の人材に、会社への“共感”を生み出すには、「社風」「企業文化」「風土」を伝えることは大きな意味を持ちます。
また、社会や地域に対してのアピールは、会社への信頼感が高まることにつながります。それは、株主にも波及することになり、株価や株の長期所有にもつながることになるでしょう。さらにこの動きは、リクルーティングにも影響します。社会や地域で会社への信頼感が高まるということは、良い会社、元気な会社としてのイメージが広まることになり、それが、就職活動する学生や転職希望者に伝わり関心が高まるからです。

周年事業の展開を検討する際に、社内報や記念式典などの「何をするか」を最初に考えるのではなく、せっかくなので、周年事業の社内外の影響を踏まえ、会社として「何を伝えたいのか」から考えていきましょう。
社員、その家族、協力会社、クライアントなどへの視点を考慮して、会社としてのメッセージを考え、場合によっては社員などを周年事業に巻き込む“参加型”のスタイルを立てていくことも、大きな効果を生み出す貴重な“周年”の1年間になるはずです。実際、弊社では周年事業の企画の段階から、社員を巻き込むスタイルで周年事業を進めていきます。
あなたの会社の周年は、何年でしょうか。周年が近いのであれば、「何を伝えたいのか」じっくり考えてみてください。

執筆者:松宮 洋昌

株式会社イベント・レンジャーズ代表取締役。
「シャカイの課題」や「カイシャの課題」をイベントを通じ解決することをミッションとしている。
「シャカイ」や「カイシャ」の課題の多くは。コミュニケーションの問題によるところが多い。
経営の想い、社員の想いなどをイベントを通じ共感することで、組織が劇的に成長することも多い。
そんなイベントのデザインを得意とする。