社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

周年事業の内容と進め方

会社を元気にする周年事業 2

周年事業の内容としては、記念パーティー、社員旅行、社員総会、運動会などのイベントが思いつきます。実際、これらを中心に行うケースが多いようですが、先に述べた通り、周年事業を「何をするのか」ではなく、「何を伝えるのか」を考えて、内容を検討することがあるべき姿といえます。そこで、会社を取り巻く“5人のヒト”に対して「何を伝えるのか」、そのために、どのような内容をどのように進めていけばよいのかを、考えていきましょう。

周年事業はその対象によって目的が異なります

会社を取り巻く“5人のヒト”とは、社員とその家族、取引先、協力会社とその家族、株主、地域や社会の5つですが、周年事業の目的は、対象に応じてそれぞれ異なります。では、各対象に対して、どのような目的が考えられるのでしょうか。
まず、社員に対しては、会社としてのこれからの決意と、これまでの感謝を伝えることが、主な目的といえます。そうすることで、会社への理解を深め、社員全員で一致団結することを促します。そして、会社への帰属意識を高めることができ、社員同士の仲間意識を高めることもできるので、日常業務での助け合いもスムーズにできる職場づくりが実現できるからです。
社員の家族を周年事業の対象として捉えるケースは少ないのですが、会社への理解を深め“会社のファン”になるくらいに親近感を高めることは大切で、社員が働きやすい環境づくりに非常に有効です。昨今の実力主義への偏りとそれに伴う終身雇用制の崩壊に相反して、伝統的な日本の会社のあり方を見直す流れが生まれ、社員とその家族をすべて含めて“会社のファミリー”と位置付ける経営者も増えてきています。
取引先の顧客に対して感謝を表すことも必要ですが、今後も事業展開を継続して行くことを考えると、会社としてのこれからの決意を伝え、自社へのファンづくりを目指すことの方が重要といえます。また、自社とクライアントが共に成長する『共創』を、訴えることも必要です。
協力会社には、これまでの会社への協力や支援に対して、感謝の意を表することは、今後の協力体制の維持のために特に重要です。そして、協力会社に会社のこれからの決意を伝え、ファンづくりを積極的に行うことは、共に成長する『共創』体制の強化や、信頼関係つくりにもつながります。
株主への対策としては、感謝の意を表し、会社としてのこれからの決意を伝えることが重要な意味があります。ファンづくりと、信頼関係つくりを図り、自社との長くお付き合いできることをお願いしましょう。
そして、地域・社会に対しては、感謝の意を表すというより、地域や社会との『共存』する意向を示し、信頼づくりやファンづくりを図ることが大切です。

それぞれの目的に合わせて周年事業の内容を検討しよう

この周年事業の目的を考えると、それぞれの対象で実施内容は異なってきます。
社員に対しては、一般的には社員総会、パーティー、社員旅行が行われます。また、社長からのメッセージを書いたカードを配布したり、社史の発行、記念品の贈呈をしたりするケースもあります。最近では、社員から広く意見と募るため、これからの会社を考えるプロジェクト会議を開催する事例も見られ、この会議で周年事業の内容や、これからの会社の展望について話し合い、社員が社長に直接意見できる機会を設けています。
社員の家族に対しては、周年パーティーや運動会などの社内イベントへのご招待、会社訪問イベントの開催、家族謝恩イベントとしてディズニーランドご招待を実施するケースがあります。周年の1年間で1回のみ行うのではなく、BBQなどの季節イベントにその都度ご招待したり、家族にも記念品の進呈を行ったりするケースもあります。基本は、社員に対する内容を、家族も含めて実施する会社としての姿勢を見せることが、家族も会社の一員であることをアピールでき、社員にそこまでケアしてくれる「良い会社」としての認識が高まります。
取引先に対しての周年事業としては、記念品の進呈、記念パーティーや会社主催のゴルフコンペなど、記念イベントにご招待するケースが多いです。そして、協力会社に対しては、記念品の進呈、記念パーティーのご招待、旅行やゴルフコンペなどのインセンティブ・イベントや記念イベントにご招待する事例が多くみられます。いずれも、周年事業のために開催する特別なイベントに招待する形で、取引先や協力会社との関係を築く内容となっています。
株主への対策としては、周年を記念した特別配当、株主総会などのお土産を豪華にした記念品、その他、記念パーティーなどのイベントがあります。
地域・社会には、CSR(Coporate Social Responsibility:企業の社会的責任)として地域貢献を目指す活動を、周年を機に始めるケースが多くみられます。この場合、その1年のみの展開もありますが、CSRとしては継続した展開が望ましいでしょう。例えば、地域や社会のためになる寄付、地域イベントの開催や協賛、記念植樹、その地域にあるビーチや公園などを清掃するなどのボランティア活動、地元の小中学校への本やPCの寄贈などが行われています。

周年事業をどのような体制で進めるのか

ちなみに周年事業を進める体制としては、大きく2つとなります。
1つは、社内で周年事業を進める形式。これには、社内の複数の部署から担当を決めて行う“社内横断型”や、社員などの対象すべてを周年事業に巻き込んでいく“参加型”などのタイプがあります。どのタイプを活用するかは、会社の組織形態やその状況、周年事業の内容によって、向き・不向きがあるので、適したスタイルを選択することになります。社内で進める体制のメリットには、社員が何らかの形で参加することで、会社への帰属意識を高めることが考えられます。また、社内で事業を進めるので、担当した社員には、本業の仕事とは別のスキルやノウハウが蓄積され、自信やビジネスに対する前向きな考え方が芽生えることでしょう。
もう1つには、周年事業を専門とする外部企業に委託することです。これにより、社員などの社内の負担を抑えることができます。さらに、周年事業のプロが実施するので、トラブルが少ないメリットがあります。万一、トラブルが起こった場合でも、その対処法にわずらわされることも少なくなります。
ちなみに、私どもイベント・レンジャーズでは、自社の周年事業そのものを社員から公募する形式をとり、さらにアンケートで公募されたアイデアの中から実際に行う周年事業の内容を決めていきました。企画の段階から、社員全員で参加してもらう“参加型”で行っています。このように、企画の段階から参加してもらうことで、社員全員に当事者意識を持ってもらうことを狙っています。もっとも、弊社の本業の領域でもあるので、自分たちで行うことは、周年事業への取り組みを学ぶ“場”として活用でき、クライアントの担当者の気持ちを理解できる“機会”としても活用しています。

周年事業は「何かを伝える」対象によって、実施目的が変わってきます。また、その目的によって、ふさわしい展開内容も変わってきます。それに合わせて、周年事業を進める体制を検討するといった手順で、周年事業を検討していきます。せっかく10年に1度、50年、100年に1度しか訪れない周年ですから、あなたの会社の環境や状況に合わせた最適な展開をじっくり考えてみませんか。

執筆者:松宮 洋昌

株式会社イベント・レンジャーズ代表取締役。
「シャカイの課題」や「カイシャの課題」をイベントを通じ解決することをミッションとしている。
「シャカイ」や「カイシャ」の課題の多くは。コミュニケーションの問題によるところが多い。
経営の想い、社員の想いなどをイベントを通じ共感することで、組織が劇的に成長することも多い。
そんなイベントのデザインを得意とする。