社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜

人本経営に成功するための基本

人本経営の実践が必須となる時代 3

未曽有の人手不足常態化社会となり、企業では人本経営を実践するだけでなく、成功していくことが生命線になってきていると強く感じています。改めて人本経営に成功していくための方法論について論じていきます。

不可欠な経営者の覚悟

まず、業績軸から幸せ軸へ経営の舵を切ることに経営者が本気でコミットする意思を揺るぎなくもつことです。先日、ベンチマークさせていただいたファースト・コラボレーションの武樋泰臣社長は、「腕一本落としてでも社員を幸せにしていきたい」と語られていました。人本経営者としての本気の迫力に圧倒されてしまいました。
絶対になんとしても、縁があって共に職場で働く社員を全員幸せにしていくと強く強く思い、念じてください。思うは田んぼに心をいれる、つまり種をまくことが語源です。植松電機の植松努さんがおっしゃる名言「思うは招く」も思いが先です。種を撒くので根が生え、芽が出て、葉がつき、花が咲き、実が実ります。日々、必ず人本経営を成功に導くと覚悟して仕事を始めていきましょう。

右腕、左腕と一枚岩になる

経営者としての腹が据わったら、次にすべきことは自分の右腕、左腕となる経営幹部に思いを語り、同志となってもらうことです。このプロセスを経ないで、いきなり社員全員に人本経営を実践していくことを宣言して失敗した事例が、実は少なくありません。まず、社員全員に向かう前に、幹部の方々と腹を割って進もうとする方向について話し合い、理解、共感、共鳴してもらうことがとても重要です。
反感や非協力的な態度が経営幹部から感じられたら、それは社員も疑念を生じることは必至で、人本経営の進みも思うようになりません。
これまでの関係性が現実的に問われてきます。場合によっては相当骨が折れるかもしれません。特に先代からバトンタッチされた後継経営者の場合、業績軸の思考が沁みついている古参の幹部社員たちはなかなか理解を示してくれないかもしれません。
ここは最初に本気度を発揮する見せ処になるかもしれません。私利私欲が感じられたら幹部たちは従いません。伊那食品工業の塚越寛会長の次の言葉を肝に銘じてください。

「ある程度の規模になったら、テクニックではなく私を離れて公の経営をしていくことが必要。社長が社長の財産を貯めるために経営している限り、社員は言うことを聞かない。お互い幸せになろうということが伝わったら、社員は心を合わせてくれる。」

幹部の皆さんに塚越寛会長の『いい会社をつくりましょう』を読んでもらい、その後、経営者としてそこに近づいていく努力をしていきたいので協力してほしいと虚心坦懐に語りかけ、対話を進めていくとよいでしょう。

いい会社をベンチマークする

経営幹部と一緒に早い段階で実際に目指すべき会社にベンチマークしに行くことはとても効果的なので、実践することを強くお勧めいたします。
株式会社シェアードバリュー・コーポレーションでは、定期的に「壺中100年の会」というベンチマークツアーを開催しています。この企画に経営者とその幹部の方で参加されている企業は、参加後、文字通り一枚岩になって人本経営の実践を進めていかれています。百聞は一見に如かずで、これから進むべき方向を幹部の方と明確に共有するための最高の題材となること請け合いです。

経営者と経営幹部が、どんな会社にしていきたいか、はっきり明確にビジョンが共有できたら、人本経営はもう半分成功したようなものです。
経営幹部との関係性構築のプロセスが完了したら、つぎはいよいよ社員への働きかけとなります。

執筆者:小林 秀司

株式会社シェアードバリュー・コーポレーション代表取締役。
人を大切にする「いい会社」づくりのトータルプロフェッショナル。内閣府認定
「地域活性化伝道師」。
社会保険労務士。法政大学大学院中小企業研究所特任研究員。企業内で行う「社風をよくする研修」
の実践を得意とする。また行政機関でも多くの講演実績がある。
著書に「人本経営」(NaNaブックス)、「元気な社員がいる会社のつくり方」(アチーブメント出版)等がある。