- 2020.01.13
- 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜
メンタル問題に積極的に取り組む経営者、メンタル責任者の特徴とは
幸せに働く社員を作るためのストレスチェック活用法 2
前回、メンタル問題に積極的に取り組む経営者、メンタル責任者の特徴は以下の3点だと説明しました。どういうことか、説明します。
- 人手不足に対して危機感を感じている。
- 生産性向上とメンタルは大きく関係すると考えている。
- 何よりも社員に愛情がある。
(1)人手不足に対して危機感を感じている。
ここ数年、人手不足の時代が言われるようになり、うつ、メンタル問題に対する経営者の考え方が変化してきたのを感じます。それは、「人がなかなか入って来ないということなら、社員がやめないという会社にしたい」ということです。
某A社では、売り上げトップ10の営業マンのうち実は3人がメンタル不調に陥っています。会社に来たり来なかったりしています。それでも、この3人の営業マンは優秀なのでトップ10の売り上げをキープしているのです。
しかし経営者は気が気ではありません。なぜならこの3人の売り上げを合わせると、約6億円にもなるからです。もしこの3人がメンタル不調は原因で退職することになったらどうなるでしょうか? 会社としては大きな痛手を被ることになります。
人手不足の時代の今は、代わりの人材はなかなかいないのです。だから今いる社員、特に優秀な社員を失ってしまう問題は経営課題となっているのです。
(2)生産性向上とメンタルは大きく関係すると考えている。
メンタル問題に積極的に取り組もうとする経営者、メンタル責任者は社員が働きやすい状態にしてあげることが結局生産性向上につながる、ということを本能的に知っています。
創業社長は自分自身の経験からも特にそうです。
また経験豊富な社員を失ってしまうと採用したとしても同じようなパフォーマンスを上げてもらうには、ものすごく時間と教育がかかるのを知っているために、メンタルが低下し気持ちが沈んでいる兆候がすこしでも感じられたら、すぐに対策をとってあげたいと思うのです。
顧客満足と従業員満足が非常に高いことが有名な、川越胃腸病院の望月院長に以前お話を伺った時に、こんなことを言われていたことがとても印象的でした。
「我々のような中小の事業体は、全員が同じ方向を向いて、そして医療スタッフ、事務スタッフ全員が同じようなエネルルギーで患者様に向き合うことをとても大切なことになります。そういう意味で、私は少しでも元気のない社員がいたら、とても気になります。なぜだろうなぜだろうと原因をさぐり、そして可能な限りできる対策をすぐにとるのです」
(3)何よりも社員に愛情がある。
社員のメンタルを何とかしてあげたい、と考える経営者、メンタル責任者はメンタルという言葉に対して、うつ、休職、などだけを想像しているのではありません。なんとなく元気のない状態、壁にぶつかって思うように力の発揮できないでいる状態、であると考えているのです。
そしてこういう状態に陥っている社員は日常的にたくさんいることをわかっています。仕事とは、常にレベルアップしていくものですから、1年前には楽々乗り越えられた業務も、今年度与えられた業務をうまく乗り越えられるとは限らないのです。そしてこのことは普通に起こることなのです。
だからこそ、すぐに発見して何とかしてあげたいと思うことは、非常に社員思いのことであり、結局のところそれは社員に対して愛情深いということです。このことが伝わるからこそ、社員は一生懸命仕事をして応えようとするのだと思います。
実は不思議なことですが「できる社員ほどメンタルになりやすい」ということをご存知でしたか? 次回はその理由について解説します。
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執筆者:山本 潤一
日本メンタル再生研究所・所長
「あるがままの自分らしさを表現することで、幸せに生き働く人を増やす貢献をし、皆が豊かになれる
社会を作る」をミッションとしている。
個人の幸せな生き方・働き方支援を行うメンタルプロフェッショナル。
ヘルスカウンセリング学会公認心理療法士、キャリアコンサルタント。
元東京医師会医院
著書・「医療福祉の現場で使える、心が通い合う会話術(日総研出版)
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