- 2020.01.12
- 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜
福利厚生で家族の理解を促す
社員の家族が応援する会社へ 3
福利厚生は、社員の勤務を軸とする生活環境を整えることで、社員の組織貢献度を高め、勤労意欲や能率の向上を図るために実施されています。日本では、その対象は社員のみならず、元社員、あるいは社員の家族にまで広げるケースも少なくありません。よりコストがかかるのに、どうして福利厚生の対象を広げる必要があるのでしょうか。
それは、より社員の“身内意識”を高める効果が期待できるからです。また、社員の家族の支持や理解を得ることができるので、社員が誇りと安心を持って働ける環境づくりにつながります。これまでの「会社の業績」軸ではなく、「社員の幸せ」軸で考えた場合、福利厚生の対象を社員の家族まで広げることは必然といえます。
展開事例① 社員が家族と共に利用できるようにする
福利厚生の対象を家族に広めるには、まず、これまで社員限定で契約している「保養所」「スポーツクラブ」「健康診断」などを、社員の家族も含めた契約に変えることです。そうすれば、社員と家族が一緒に施設やサービスを利用できるようになり、家族自身も会社に対して身内意識が生まれます。
また、社員対象の「社員旅行」「クラブ活動」「社内運動会」などのイベントに、家族も参加できるようにするのも効果的です。
「社員食堂」も社員の家族に開放するだけで、実際に働いていなくとも会社の雰囲気を感じ取ってもらうことができ、会社との信頼関係がより深まります。
展開事例② 社員の家族生活を充実させる
百貨店の伊勢丹では、初売りの開始日を競合他店より一日遅く1月3日に設定しました。その理由は、社員に正月を家族と過ごしてもらうためです。元旦明けの稼ぎ時をあえて休日にして、社員生活の充実を選びました。
また、社員の生活パターンに合った勤務スタイルを選べる会社もあります。UNIQLOでは、正社員やアルバイト・パート以外に、国内で働く転勤のない「地域正社員」を導入。さらに、1日8時間労働の例外となる変形労働時間制の仕組みで「週休3日制」を導入し、1日10時間労働で同じ給与となる勤務も選択できます。これらは、働き方を多様化して良い人材を確保することが目的ですが、社員からすれば、自分で働き方を選べるので、家族生活を充実させることにもつながります
他にも、「家族の記念日を休日にする」制度を導入することで家族とのコミュニケーションの機会を設けたり、「子育て支援」や「介護支援」を充実させてそれぞれの環境に合わせた働き方を実現させたりすることも良い施策です。「勤続祝い」は、社員自身への記念品を進呈するケースが多いのですが、家族の慰労を考慮して家族で使う記念品にすれば、対象社員のためにも家族のためにも効果的な施策となります。
展開事例③ 社員に代わり家族の生活を保障する
その代表的な事例としては、JRグループの主要駅構内にある売店「KIOSK」があります。この店舗そのものが、そもそも鉄道事故などで一家の働き手を失った遺族、主にその妻に働き口を確保する目的で創られたからです。
これほど大規模な福利厚生は早々できませんが、もっと導入しやすい施策もあります。それは、あるベンチャー企業が行っている「家族へのプレゼント」。社員の家族の誕生日や結婚記念日に小さな花束を会社から贈呈するだけで、その家族の満足につながった実績があります。
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執筆者:松宮 洋昌
株式会社イベント・レンジャーズ代表取締役。
「シャカイの課題」や「カイシャの課題」をイベントを通じ解決することをミッションとしている。
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