- 2020.01.13
- 実践ヒント〜人本経営を実現させるには〜
病気の治療、そして子育て・介護と仕事の両立2
成功する働き方改革 5
今回のテーマは「介護と仕事の両立」を取り上げていきます。
わが国で現実化している超高齢化社会の到来によって、いずれの企業も避けがたくなっていくのが、家族の介護が必要となった社員がこれから急増していく、ということです。
2025年には、年齢構成上最も人口の多い団塊世代(約800万人)が、すべて後期高齢者(75歳以上)になります。その結果、国民の5人に1人が75歳以上、3人に1人が65歳以上という超高齢化社会に突入していきます。
2016年の時点では、要支援もしくは要介護認定者数は625万人と発表されています。この数はこの10年で130%を超える伸長となります。現状の人口ピラミッドの変化予測からすると、今後10年で軽く認定者数は倍増することになるでしょう。つまり、人口比で10%を超える国民が要支援もしくは要介護認定者という事態になります。10人に1人ですから、自社にも必ず介護が必要な社員が発生してくるのは必至です。
育児と仕事の両立ということでは主に30歳代前後の女性労働者マターでしたが、介護は主に50歳代の男性労働者に関わってくることが想定されます。
働き盛りの、企業内で中核的人材となっている層に関連する課題として発生するのです。そして、育児のときは自分でコントロールが可能でしたが、介護は突然、その日が訪れてきます。
介護と仕事を両立させる企業がホンモノとなる
ワークライフバランスという言葉はよく用いられるようになりましたが、これからは介護と仕事を両立させる取り組みに成功してこそ、「うちは出来ている」と宣言できることになるでしょう。家族に介護が必要となったのに、会社から十分なサポートが得られず、介護離職者を発生させてしまうような事態になっていくようでは、さらに人手不足が深刻化し、衰退を招いてしまうことでしょう。
- 介護についての企業内の理解を深める。特に経営者の理解は必須。
- 社員が相談できる窓口や体制が必要
- 専門家との協働が必要
- 人本主義的働き方改革の実現
介護と仕事の両立に向けての対策の柱は上記のような事項となるでしょう。子育てと違い先が見えない介護では、社員は将来についてとても不安を抱き、心身ともに疲労を抱えていくことになります。そんな中で、会社側の理解があると本人にとってどれだけ助かることになるのか、経営陣を始め総務セクション、そして現場の上司、同僚、後輩の理解をどれほど示せるかが極めて重要です。
社員に対して介護についての啓発や情報提供を十分に行い、他人ごとではないという認識を深めていきます。そして、家族の介護が必要になった時には、一人で悩まず会社に相談できる体制があることが望まれます。
介護の必要な状態も様々ですから、介護の専門家との連携も必要となってくるでしょう。専門知識のあるスタッフを直接雇用できるのがベストでしょうが、それが叶わないとしても、信頼できる外部の専門家を選定し、その時のための準備を事前に始めておきたいところです。
働き方改革と人本主義については、これまでも触れてきましたが、この介護と仕事の両立に成功するための人本主義的な対応が不可欠な要素となってきそうです。
社員の家族に対する関心度、何でも言える環境、変則的な就労を余儀なくされることへの理解、介護という負担を抱えながらモチベーションをキープして働いていてもらうためのサポートなど、人本主義的でないと対応できないことばかりになるからです。常用労働者の介護休業の取得率はわずかに0.06%(平成27年度雇用均等基本調査)とこれからの課題ですが、一気に人本主義が企業に根差す好機ともいえるのです。
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執筆者:小林 秀司
株式会社シェアードバリュー・コーポレーション代表取締役。
人を大切にする「いい会社」づくりのトータルプロフェッショナル。内閣府認定
「地域活性化伝道師」。
社会保険労務士。法政大学大学院中小企業研究所特任研究員。企業内で行う「社風をよくする研修」
の実践を得意とする。また行政機関でも多くの講演実績がある。
著書に「人本経営」(NaNaブックス)、「元気な社員がいる会社のつくり方」(アチーブメント出版)等がある。
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