社員満足を上げ、働きがいのある会社へ「元気な会社をつくるプロジェクト」

すべての記事をみる

カテゴリーからさがす

シリーズからさがす

件数:92件
  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

地域や社会に誇れる会社にしたい

目指す会社に育てる社内イベント 9

『地域や社会に誇れる会社』というと、直接的に自社の売上とは関係ないと考えになる方が少なくないと思います。しかし、デジタル時代となった今、会社がコンプライアンスを実践できているか、不祥事はないか、不祥事があった場合の対応はどうかなど、企業に対して厳しい批判の目が一般的となっており、悪い評価は瞬く間に広まってしまいます。その悪評は悪くすると得意先からの取引の自粛や、消費者の不買運動などにつながります。そのため、地域や社会に対してどのように対応しているかは、会社経営を左右する重要なファクターの1つになるといえるのです。そして社員目線で考えると、自分の会社が地域や社会にキチンとした対応をしていることがわかるので、“誇れる”会社になります。今回は、この『地域や社会に誇れる会社にしたい』という課題について考えていきます。 『地域や社会に誇れる会社』は“生産性”を高める 『地域や社会に誇れる会社』となると、社内に次のようなことが起こると考えられます。まず、社員が自分の会社や仕事に対して誇りや自信を感じるようになります。そして、社員の心の中に、会社に対する所属意識が生まれ強くなっていきます。そうすると、社員それぞれが自分の行動に責任をもつことを意識するようになり、仕事だけでなくプライベート(勤務外)でも、社会人としてきちんとした行動を取るようになります。これは地域や社会に対して誠実な対応をしている会社に習って、それにふさわしい行動を取るべきだと考えるようになるからです。こうした行動ができるようになると当然、社会・地域やクライアントは、社員だけでなく会社に対しても良い印象を持つようになり、業務にまで良い影響を及ぼすこととなります。そうなると、地域や社会が、社員や会社を応援してくれたり、ちょっとしたステイタスとして尊敬や憧れの目を向けたりするようになります。このような環境の下、「働きたい」「働いてみたい」という人材が集まりやすくなり、良い人材を選択しやすくなります。リクルーティングにも良い影響が出てきます。『地域や社会に誇れる会社』は、一見、業務などに関係ないように思えますが、社員の意識改革から経営環境のベースを下支えして、最終的には業務やリクルーティングなどの企業活動に影響することになります。 『地域や社会に誇れる会社』にするための4つのポイント それでは、『地域や社会に誇れる会社』にするには、どうすれば良いのでしょう。地域はエリアの特性に、社会はその時々で変化する状況に応じて、それぞれ課題があります。『地域や社会に誇れる会社』にするには、その課題に合わせた支援活動を行うことが前提条件となります。“地域や社会がもつ課題や要望を解決する”、これが第1のポイントとなります。そして第2のポイントは“無理をしない”こと。無理をすると途中でとん挫してしまったり、どこかに手抜きやミスがうまれたり、中途半端な活動になってしまうので、かえって悪い影響を及ぼします。自分たちでできること、身の丈に合った範囲に収めておかないと、コストや手間が無駄に空回りして、活動自体が続かなくなります。続かない企業活動は「単発の活動」と認識されるので、地域や社会には「単なる人気取り」とか「気まぐれ」と思われてしまいます。地域や社会に対する活動は、あくまでも、長く継続することが重要で、継続することではじめて企業イメージとして定着していくことができます。“継続する”ことが第3のポイントになります。そして、この活動を社員に認識・理解してもらわないと、社員の意識改革につなげることができません。そのため、社員と地域社会の接点を設けることが必要で、そのためには社員が自主的に活動に参加できるようにすることが第4のポイントです。 『地域や社会に誇れる会社』にするために有効な社内イベント例 『地域や社会に誇れる会社』にするために有効な社内イベントとして最も代表的なものに「CSR活動」があります。ご存じのように“CSR”はCorporate Social Responsibilityの略で、“企業の社会的責任”と訳されています。様々な社会問題、地球環境や地域社会に向けた企業活動で、芸術や文化を支援するメセナ活動、寄付の実施や奨学金の設立、エコ活動などバリエーションがあります。しかし、専門体制や資金を導入する展開だけでなく、会社のコンセプトにマッチした地道な活動を目指すと、実施しやすくなります。例えば、PCやランドセルの地域に寄付、古着や在庫商品などを災害地や地元学校への寄贈、商品サンプルや余った備品などのチャリティセールです。他に「地域イベントへの参加、協賛」があります。具体的には、地域の“お祭り”に協賛することです。その協賛は、社名を参加者に提示する工夫をしたり、自社商品を景品として提供したり、協賛ブースを設けて運営支援したりするなど、さまざまな形式があります。また、地域の清掃、夜守り活動、通学の見守りなど、地域のもつ課題を解決したり、環境整備などを積極的に行ったりする「地域ボランティア」もあります。私の業界でいうと、イベントを開催する際に行う防災訓練などを、そのイベントを開催する自治体と共同で実施したり、社内だけでなく地域住民も助けるためのネットワークや社内体制を整えたりすることなどを実施しています。『地域や社会に誇れる会社』にするためのこれらの施策に、社員の参加する仕組みを取り込む方がより効果的です。地域や社会の課題や要望の中から、御社の社風や企業文化としてマッチする要素を探しだし、社員を巻き込んで展開できる活動を検討してください。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

ダウンサイジングが経営課題となった現代

人本経営の実践が必須となる時代 1

「まったく日本人が来ない」 某有名企業の関連会社の採用担当者が、求人を出しても日本人が応募にすら来なくなっていると嘆いていました。この手の話は、ここ数年でよく聞くことが本当に多くなりました。いよいよ人手不足常態化社会となったわが国では、多くの企業で経営のあり方を見直していかざるを得ない段階に入ってきていると強く感じています。とにもかくにも、人が採用できなくなった会社では、現有メンバーが離職しないよう「社員が辞めない会社づくり」をしていかないと話にならなくなってきています。その有力な答えは、人を大切にする人本経営の不断の実践と、それに成功して企業体を生まれ変わらせることだということを、ますますもって強く確信するところです。しかし、人本経営の実現にはどうしてもある程度時間がかかります。会社が生まれ変わるために、今後、多くの企業で実践されていくであろうことが、企業規模の適正化への取り組みということになるのではないでしょうか。 いかに適正にダウンサイジングさせていくか 2017年、ヤマト運輸は業構造改革案を発表しました。「社員がイキイキと働ける職場を作り直し、社員の満足を高めていくこと」が最優先事項であると銘打たれ、それまでの低価格、大口優先、過剰サービスで拡大してきた経営のあり方を抜本的に見直すと宣言しました。実際、最大手顧客であったアマゾンとの取引を停止し、値上げ交渉を断行していきました。これまでの経営感覚からは大きく軌道を修正したと認識出来ました。その後、実に多くの企業で同様の取り組みが行われ、日本の企業社会で、まさしく音を立てて変革が進んでいるといってよい状況です。経済の最先端である物流の最大手ヤマト運輸が人手不足で売上拡大路線是正の取り組みを断行し始めたという象徴的な出来事でしたが、他にも営業時間の短縮、年末年始を休業にする飲食店や商店、24時間営業の見直しを考え始めたコンビニなど、関連するニュースが増えています。適正規模へダウンサイズしていくことを、これからの時代に経営者は求められてきているのです。 企業社会が変質し始めたことは疑いようがない 大きいことはいいことだ、拡大再生産が是であると、経済社会はある意味疑いのない神話で成り立ってきました。しかし、ここに至って持続可能性を高めるためには、それが絶対解ではないという認識が先見のある経営者には広がっています。人本経営の要である、急成長ではなく安定成長による年輪経営が、期せずして社会的要請になってきたのです。ここ数年の対応が、その先の企業の栄枯盛衰を決するといって過言ではない状況です。業績軸から人本軸へ、この1年で企業社会が変質し始めたことは疑いようがありません。問題は、この経営改革の道を踏み外さないことです。長時間労働を前提とせず、現有人員体制で適正労働時間による企業経営をゴーイングコンサーンできる体制を再構築していくことが多くの企業で経営課題となっています。 月平均残業20時間程度をベースに再生の道を探る これからは長時間労働を前提にして現状の企業経営状況を続けていては、早晩、社員の離職を誘発していくことは確実で、もはや不可能です。よって月平均残業20時間程度をベースにして、企業規模をダウンサイズしていくことが必要になってくる企業はとても多くなると予測されます。極力残業をなくし、家庭と仕事を両立していく企業風土を人本経営によって確立していくことです。それが功を奏して、社員の生きがい、働きがいを高めていくことが出来れば、社風はよくなり、やがてその雰囲気のよさに触れて、新規募集者を確実に採用できるようになっていくはずです。 リストラを伴うダウンサイジングは破滅をもたらす いい会社に生まれ変わるために、それまで進めてきた売上至上主義の拡大志向の経営のあり方を改めていくことは、物事の発想が真逆となるので容易なことではありません。その際、決して安易に実行してはならないのがリストラです。人手不足で経営の持続可能性が下がっているところで社員のリストラをするようでは、この先取り返しがつかないことになるでしょう。しかし、今、金融業界で恐ろしいことが起きようとしています。 「銀行が消える日」がやってくる。ついに大手銀行が大規模リストラへ(日経ビジネスonline) みずほ銀行の支店など、国内拠点の2割に当たる約100店舗を削減、2026年度末までにグループの従業員を1万9000人減らす方針と報じられました。また、三菱UFJフィナンシャルグループも2023年度末までに9500人分の業務量を削減、三井住友フィナンシャルグループも2019年度末までに4000人分の業務量を削減する、としています。業務量の削減とは、またなんと姑息な言い回しでしょうか。長く続くマイナス金利で、もはやこれまでの伝統的な銀行業務が急速に儲からなくなっていることが原因だといいます。明治維新、戦前戦後に次ぐ新たな70年周期として、資本主義から人本主義への時代変化が起きていることをお伝えしてきました。そして、かつて殿様や大日本帝国が滅んだように、それまで世の中の支配的だった存在が失われるのでは、と指摘していましたが、その正体がいよいよ見え始めてきたのかもしれません。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

今、改めて”働き方改革”を経営者に問う

人本経営の実践が必須となる時代 2

あの頃に似ている・・・昨今の「働き方改革」関連の動向で、各企業の動きを報じるニュースや出来事を見知るにつけ、そう感じるようになってきました。 あの東日本大震災で、巨大津波が原発を破壊し、わが国はエネルギー危機に陥りました。企業へは省エネ協力の大号令がかかり、とくに東日本の会社は競って消灯し、昼でも薄暗いオフィスがそこここと出現しました。まるで日本中が、社内の蛍光灯一本ずつ消点灯ができるように徹底して節約していた未来工業のような会社ばかりになってしまいました(笑)。 その後、エネルギーの供給状況は改善されていきましたが、その後も薄暗いオフィスでいる会社が存在し続けています。緊急時の省エネへの協力という目的は終えたのに、環境にいいから節電と称して続けている訳です。なんのことはない、こりゃいいコストダウンになると経営者が好い目を見ているという構図です。 今、政府が「働き方改革」を旗振り、長時間労働の抑制が社会的要請事項になってきました。そこで、強制的に電源をシャットアウトして残業ができないオフィスが増えてきているようです。今、改めて経営者に尋ねたいのです。 「電源を切る目的は何ですか?」 まさか、残業代のコストダウンが実現するいい口実が出来たと思っていませんよね?受注業務量の見直しや、新規採用、適材適所の配置などといった合理的配慮をせず、社会的ムーブメントだからとただ残業禁止にしていては、「働き方改革」でもなんでもなく、「働き方破壊」になってしまいます。「それを実現していけば、社員の幸福感が増大する」ようでなければ、「働き方改革」は意味がありません。 「何故、長時間労働を是正するのですか?」 幸福の礎である家庭生活を十分に過ごせる時間をつくるためです。また、仕事漬けでなく多様な見識を身につけてもらうためのプライベート時間を社員に与えるためです。定時で会社を出された社員がカフェで仕事を継続していたら意味がありません。また家庭に戻っても居場所がないというような人間力のない社員や、余暇を無駄に費やすだけの社員が多いとしたら、それまでの人づくりが間違っていたのではないでしょうか。 「何故、育児休業や介護休業制度を充実させるのですか?」 幸福の礎である家庭の事情を仕事の都合よりも優先していい、という企業風土を育てるためです。 いかに制度が充実したとしても、活用しにくい職場であれば意味がありません。また、休業することは権利だと言わんばかりに行使して、周りの状況を慮ることができずに周りと軋轢を生んでしまう社員がいるとしたら、利他の心を育む職場づくりへの思いが足りなかったのではないでしょうか。もしかすると、それ以前に社員との対話の時間が少なすぎたのかもしれません。 「何故、定年後の社員を継続雇用するのですか?」 数ある会社のなかで当社を選び、長年貢献してくれたことに対して感謝の念を表し、本人が納得できるまで職業人生を全うして人としての尊厳を感じてもらうためです。 法律で決まっているからなどという短絡的な理由では、せっかくの継続雇用が台無しになります。施しで定年後の雇用を実施しているような感覚は、すべての社員が敏感に感じることでしょう。本当にこの会社で勤め上げられて人生が充実していたと年老いた社員が心から感じるような会社をつくることで永続が実現します。 当サイトをご覧くださっている皆様へ提言があります。「働き方改革」という言葉を死語にしていきましょう。この言葉の導線で、幸福感が増大する会社がわが国に増えるという結果になりえないと判断できるようになってきたからです。代わりに「わが子を就職させたくなる『いい会社』づくり全社運動」と銘打って、全社員が関わる経営改革を提唱したいと考えます。要は人本経営の実践なのですが、全社員にとって「自分ごと」として捉えられるキャッチフレーズだと思います。いかがでしょうか。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

人本経営に成功するための基本

人本経営の実践が必須となる時代 3

未曽有の人手不足常態化社会となり、企業では人本経営を実践するだけでなく、成功していくことが生命線になってきていると強く感じています。改めて人本経営に成功していくための方法論について論じていきます。 不可欠な経営者の覚悟 まず、業績軸から幸せ軸へ経営の舵を切ることに経営者が本気でコミットする意思を揺るぎなくもつことです。先日、ベンチマークさせていただいたファースト・コラボレーションの武樋泰臣社長は、「腕一本落としてでも社員を幸せにしていきたい」と語られていました。人本経営者としての本気の迫力に圧倒されてしまいました。絶対になんとしても、縁があって共に職場で働く社員を全員幸せにしていくと強く強く思い、念じてください。思うは田んぼに心をいれる、つまり種をまくことが語源です。植松電機の植松努さんがおっしゃる名言「思うは招く」も思いが先です。種を撒くので根が生え、芽が出て、葉がつき、花が咲き、実が実ります。日々、必ず人本経営を成功に導くと覚悟して仕事を始めていきましょう。 右腕、左腕と一枚岩になる 経営者としての腹が据わったら、次にすべきことは自分の右腕、左腕となる経営幹部に思いを語り、同志となってもらうことです。このプロセスを経ないで、いきなり社員全員に人本経営を実践していくことを宣言して失敗した事例が、実は少なくありません。まず、社員全員に向かう前に、幹部の方々と腹を割って進もうとする方向について話し合い、理解、共感、共鳴してもらうことがとても重要です。反感や非協力的な態度が経営幹部から感じられたら、それは社員も疑念を生じることは必至で、人本経営の進みも思うようになりません。これまでの関係性が現実的に問われてきます。場合によっては相当骨が折れるかもしれません。特に先代からバトンタッチされた後継経営者の場合、業績軸の思考が沁みついている古参の幹部社員たちはなかなか理解を示してくれないかもしれません。ここは最初に本気度を発揮する見せ処になるかもしれません。私利私欲が感じられたら幹部たちは従いません。伊那食品工業の塚越寛会長の次の言葉を肝に銘じてください。 「ある程度の規模になったら、テクニックではなく私を離れて公の経営をしていくことが必要。社長が社長の財産を貯めるために経営している限り、社員は言うことを聞かない。お互い幸せになろうということが伝わったら、社員は心を合わせてくれる。」 幹部の皆さんに塚越寛会長の『いい会社をつくりましょう』を読んでもらい、その後、経営者としてそこに近づいていく努力をしていきたいので協力してほしいと虚心坦懐に語りかけ、対話を進めていくとよいでしょう。 いい会社をベンチマークする 経営幹部と一緒に早い段階で実際に目指すべき会社にベンチマークしに行くことはとても効果的なので、実践することを強くお勧めいたします。株式会社シェアードバリュー・コーポレーションでは、定期的に「壺中100年の会」というベンチマークツアーを開催しています。この企画に経営者とその幹部の方で参加されている企業は、参加後、文字通り一枚岩になって人本経営の実践を進めていかれています。百聞は一見に如かずで、これから進むべき方向を幹部の方と明確に共有するための最高の題材となること請け合いです。 経営者と経営幹部が、どんな会社にしていきたいか、はっきり明確にビジョンが共有できたら、人本経営はもう半分成功したようなものです。経営幹部との関係性構築のプロセスが完了したら、つぎはいよいよ社員への働きかけとなります。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

人本経営では社長の本気度が試される

人本経営の実践が必須となる時代 4

人本経営の重要性に気づいて、経営のあり方を業績軸から幸せ軸へ一変させていく決意を固め、行動に移ります。 いくら経営者や経営幹部が本気で人本経営を志したとしても、事態が明日から一変する訳はありません。現実的にはいろいろなことがそれまでと同様に発生してくることになるでしょう。いろいろと経営判断をしなければならない事案に遭遇した時に、どのように考え行動をしていくか、その際に「本気で人本経営を目指そうとしているのか」を推し測られることになります。そして、その行動によって人本経営という形に近づけるのか、近づくことを妨げるのかが決定していきます。日々この繰り返しで、今日の判断が人本経営に向かう行動であれば、確実に会社は人本経営に近づき、社員たちの心に届き始めます。それが炭火の種火となって、一人また一人と社員の心に着火していき、社風がよくなっていくのです。 試され場面 その1 顧客との関係 まず、これまで取り引きしてきた顧客との関係を考える場面は往々にして出てくるでしょう。「経営をしているのだから、1円でも多く売り上げたいし、利益を上げたい」――社長なら誰しも思うところです。ここがいちばん最初の「試され場面」となります。確かに売上が上がっているけれども、その成果の陰で心を折りながら仕事をしている社員がいるとしたら、あるいは、その慣行を続けているせいで長時間の残業を余儀なくされているのだとしたら、本気の決断を人本経営者ならしていただきたいのです。人本経営を貫いているある会社の社長は、お客様本位で仕事をしていくので、お客様に喜んでもらえることを第一に考えています。しかし、「自分たちの努力や価値を感じていただけない取引先はお客ではないと考えている」と公言しています。同社の製品を購入した先で、メンテナンスに行っている若い社員が下請けのごとくあしらわれていると聞き及んだ時、その社長はすぐに駆けつけ先方の社員に啖呵をきって、本人いわく「どつき倒した」そうです。どんなにつらくとも社員の口からは「その仕事をやめる」とは客先で云えないのだから、社員がののしられたり、馬鹿にされたりすることを絶対に許さないと決めているそうです。こんな行動を目の当りにしたら、社員の心に火が着かない訳はないのです。また、別の会社では、たくさんの注文をいただき、いつも受電が鳴りっぱなし状態です。お昼時も、定時後も電話が鳴り続けています。それに対応していると、いつまで経っても適正な労働時間で仕事をしていくことは叶わないと考え、社長は決断しました。「もう電話取らんでええ。」担当している社員たちは、19時位までなら残業してもかまわないと進言しましたが、「あかん、18時までが当社の営業時間や。これからはそうする。」と本気の判断を示しました。これもまた、「社長は本気だ」と社員に伝わらない訳がないエピソードといえるでしょう。 試され場面 その2 労基署調査 「わが社は人を大切にする人本経営を実践しています」と言っても、労基署の職員にはまず伝わりません。賃金台帳、賃金規程、三六協定をみて、労働基準法に違反していれば、容赦なく是正指導がされていきます。前出の受電調整をした会社にも、先ごろ監督署の調査があり、割増賃金の基礎に複数の手当てが含まれていないこと、さらに三六協定で締結している時間外労働を超えて残業が発生していることに是正勧告がなされました。この際も、会社が人本経営でいくのかが試される決定場面となります。手当を残業代に含んでいなかったのは知らなかったためであるから、今後は含んで支給することにしようと決断し、三六協定については、今まさに業務量を調整しようとしているときに起きたのだから、これは天啓と捉え、三六協定の範囲内で労働時間が収まるよう業務改善するいい機会にしていこうと決断しました。小手先の手法、例えば前払い固定残業代制度を導入して緩和をはかるなどの措置も考えられるところですが、その社長はこれまでの経営の前提が間違っていたのなら、それが本質問題であると捉え、厳格に労基法を順守して正々堂々と人本経営を断行していくことを決意しました。いったん売上は下がり、人件費のコスト増を招き、収益性が悪化する可能性は高いでしょう。しかし、前提条件をきちんと人本経営が永続できる体制にしていくことで、長い目で見たときの会社の将来は確実に明るいと断言できます。これからも見守っていきたいと考えています。このように、人本経営を志した後の経営陣の本気の行動が、人本経営を確実に加速させていくのです。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

人本経営実践は「出来ることからわが社らしく」が原則

人本経営の実践が必須となる時代 5

以前、島根県石見地区で半年間にわたって「企業魅力化実践セミナー」が開催されました。魅力化を高めるためには人本経営の実践が不可欠ということで、内容はいかにして自社で人本経営を実践していくか、を落とし込むものになりました。 地元のNPO法人が、その6か月の取り組みが1冊の冊子としてまとめられました。冊子の中では、最初に受講した時と、すべてのカリキュラムが終了した段階、それぞれの感想を聞いているページがあります。 第1回目のセミナーを受けての正直な感想は? こんな問いかけに対して、地元で電器会社を経営している社長はこう語っています。「本当に大丈夫なの?という気持ちはありました。初めて人本経営の考え方を聞いたときは、実際にうち の会社で出来るのか?と弱気になってしまっていたと思います。」 全6回を終えて、今の感想は? 同じ方にこう聞いて、こんな答えが返ってきました。「セミナーを受けて、業績以外に幸せをつくることが出来るんだと気づくことが出来ました。幸せと満 足にどれだけ近づけるかで日々の業務も変わってくるのかと思います。会社としてはまず、経営理念を磨 き、浸透させることから始めたいと思います、社員全員が同じ目的をもって前に進んでいる状態をつくりだしたいですね。それから、現場のみんなで話し合える環境、みんなで考えていこうという空気をつくっていきたいと思っています。人本経営の話を受けて、本来の会社のあり方というものを思い出すことが出 来ました。相手への感謝の気持ちを忘れず、社員全員が家族と思えるような会社にしていきたいです。」 幸せ軸に舵を切ることに意欲を高める 完全に伝わっていると感じられます。幸せ軸に舵を切るという意欲が高まっている様子です。20社ほど の参加がありましたが、他の方も押しなべて同様な反応です。セミナーには経営者だけでなく、管理職の方も多く参加していました。組織のリーダーという立場から も大きな気づきを得ていただけたようです。食品メーカーで管理部長をしている女性はこんな感想を口にしています。「私自身、経営の視点が数字しかなかったので、衝撃的な内容でした。業績よりも社員の幸せが重要だ と言われて、未知の世界を見たような心境でした。でも、思ってみると全く特別なことではないんですよね。従業員を大切にするなんて当たり前のこと。なんでこんな当たり前のことを気づかずにやっていたんだろう…と気づかされました。」会社に戻り、とにかく声掛け、挨拶を積極的にしていく行動をしていったそうです。すると消極的だった社員も挨拶してくれるようになったので本当に嬉しかったということです。根気強く続けていきたいと 思っているそうです。 人本経営実践のコツを会得した経営者 小さな木工所を営んでいる経営者の語りは、この時のセミナーの達成感を感じさせてくれるものでした。 「みんなでボーリング大会したんですよ。福袋買ってきて、景品を用意したりして。思った以上に従業 員の反応がよかったんですよね。ボーリングの後は打ち上げもして、そんなことも大事だなと思いました。あとは誕生日休暇や、土日の連休をつくったら、これも思った以上に従業員が喜んでくれて驚きまし た。本当に些細なことでも従業員のことを考えるのは大切だなと思いましたね。」セミナーでは、人本経営のあり方として極力、残業時間を減らし、家庭での時間を増やし、充実させていくことが大事だと伝えました。その木工所はまだ週休2日制にもなっていません。土曜日は不定休となっていました。この社長は、わが社がいきなり残業ゼロとかは叶えられっこない、でも近づく努力は 出来るはずだと考え、第一土曜日は定休日にすると社員たちに宣言したのです。そうしたら歓喜が沸き起 こったというのです。自社でできることを一つ一つ実践していけばよいのです。会社にとっては些細なことも社員にとって大きな喜びになることは沢山あるのです。社員の喜ぶ顔をみたこの経営者は、人本経営 実践のコツを会得したのです。きっと会社の状態は今日よりも明日、よくなっていくことでしょう。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

今、経営者、メンタル責任者が感じていることとは

幸せに働く社員を作るためのストレスチェック活用法 1

2015年12月に義務化されたストレスチェック制度も早いもので3年目に入りました。当初はとりあえず法律で義務化されたので、しょうがないので実施するか程度の認識だった企業も多かったことでしょう。しかし年数がたって体験を重ねるにつれ、各企業ごとにこの制度への取り組み方も特色が出てきました。幸せに働く社員を作るために、この制度をどのように活用していったらよいのか、改めて今、振り返ってみたいと思います。 1.ストレスチェックに対して二極化した考え方 このストレスチェック制度では高ストレス者と認定された方は自分から手を挙げれば医師面談を受けられるということになっています。当然のことながら手を挙げなければ、だれが高ストレス者であるのかがわからず、そうなると企業としては効果的な対策が行えません。仮に手を挙げて医師面談を受けたとしても面談は20分程度しか行なわれず、十分な対策とはいいがたいものがあります。またそもそも手を挙げる社員はほとんどいない、という現実もあります。こんな状況が多くの経営者やメンタル責任者に知れ渡るにつれて、経営者やメンタル責任者の間では、二極化した考え方が広まりつつあると感じています。それは、 義務なので最低限のことをやっておけばよい。 社員のメンタルを本当の意味で把握して、定着率向上や生産性向上、に役立てたい。 の2つです。それぞれどういう意味か説明します。 2. 制度自体の意味が感じられないと見切ったが故の二極化。 1)義務なので最低限のことだけをやっておけばよい。 誰も手を挙げない、そして誰が高ストレス者なのかを会社は知ってはいけない。医師面談受ける人はほとんどいない。仮に面談を受けても20分程度を1回やって終わり。こんな現実を目の当たりにしたためか、「法律上最低限のことを最低限の費用でやっておけばそれでよい」と考える経営者、メンタル責任者は非常に多いと感じます。そもそもメンタルの問題は経営上の優先順位として高くないと考えているからという理由もあると思います。私は今まで何千人という経営者、メンタル責任者にお会いしてきましたが、この考え方になった方々は次のように言う方が非常に多いと思います。「この制度って、いったい何の意味があるのかな」この言葉は、この制度を作った政府側にしてみるとショッキングなことかもしれませんが、現場の方々にはこのような声が非常に多いのはまぎれもない事実です。現場の方々にしてみると、効果的な対策が取れないものにお金をかけて一体何になるのか、という思いが強いのではないかと感じます。 2)社員のメンタルを本当の意味で把握して、定着率向上や生産性向上、に役立てたい。 一方、このような考え方の経営者、メンタル責任者も近年急速に増えてきたと感じます。このような考え方をしているのは、私の経験では1000人以内の創業経営者が多いように思います。かれらも、ストレスチェック制度自体にはあまり意味を感じていない方々が多いと感じます。しかし、せっかくお金をかけなくてはならないのだから、もっと良い活用法はないのか、と真剣に探している方々なのです。彼らの考え方の特徴は、 人手不足に対して危機感を感じている。 生産性向上とメンタルは大きく関係すると考えている。 何よりも社員に愛情がある。 などの点が特徴的と思います。どういうことか次回、ご説明します。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

メンタル問題に積極的に取り組む経営者、メンタル責任者の特徴とは

幸せに働く社員を作るためのストレスチェック活用法 2

前回、メンタル問題に積極的に取り組む経営者、メンタル責任者の特徴は以下の3点だと説明しました。どういうことか、説明します。 人手不足に対して危機感を感じている。 生産性向上とメンタルは大きく関係すると考えている。 何よりも社員に愛情がある。 (1)人手不足に対して危機感を感じている。 ここ数年、人手不足の時代が言われるようになり、うつ、メンタル問題に対する経営者の考え方が変化してきたのを感じます。それは、「人がなかなか入って来ないということなら、社員がやめないという会社にしたい」ということです。某A社では、売り上げトップ10の営業マンのうち実は3人がメンタル不調に陥っています。会社に来たり来なかったりしています。それでも、この3人の営業マンは優秀なのでトップ10の売り上げをキープしているのです。しかし経営者は気が気ではありません。なぜならこの3人の売り上げを合わせると、約6億円にもなるからです。もしこの3人がメンタル不調は原因で退職することになったらどうなるでしょうか? 会社としては大きな痛手を被ることになります。人手不足の時代の今は、代わりの人材はなかなかいないのです。だから今いる社員、特に優秀な社員を失ってしまう問題は経営課題となっているのです。 (2)生産性向上とメンタルは大きく関係すると考えている。 メンタル問題に積極的に取り組もうとする経営者、メンタル責任者は社員が働きやすい状態にしてあげることが結局生産性向上につながる、ということを本能的に知っています。創業社長は自分自身の経験からも特にそうです。また経験豊富な社員を失ってしまうと採用したとしても同じようなパフォーマンスを上げてもらうには、ものすごく時間と教育がかかるのを知っているために、メンタルが低下し気持ちが沈んでいる兆候がすこしでも感じられたら、すぐに対策をとってあげたいと思うのです。顧客満足と従業員満足が非常に高いことが有名な、川越胃腸病院の望月院長に以前お話を伺った時に、こんなことを言われていたことがとても印象的でした。「我々のような中小の事業体は、全員が同じ方向を向いて、そして医療スタッフ、事務スタッフ全員が同じようなエネルルギーで患者様に向き合うことをとても大切なことになります。そういう意味で、私は少しでも元気のない社員がいたら、とても気になります。なぜだろうなぜだろうと原因をさぐり、そして可能な限りできる対策をすぐにとるのです」 (3)何よりも社員に愛情がある。 社員のメンタルを何とかしてあげたい、と考える経営者、メンタル責任者はメンタルという言葉に対して、うつ、休職、などだけを想像しているのではありません。なんとなく元気のない状態、壁にぶつかって思うように力の発揮できないでいる状態、であると考えているのです。そしてこういう状態に陥っている社員は日常的にたくさんいることをわかっています。仕事とは、常にレベルアップしていくものですから、1年前には楽々乗り越えられた業務も、今年度与えられた業務をうまく乗り越えられるとは限らないのです。そしてこのことは普通に起こることなのです。だからこそ、すぐに発見して何とかしてあげたいと思うことは、非常に社員思いのことであり、結局のところそれは社員に対して愛情深いということです。このことが伝わるからこそ、社員は一生懸命仕事をして応えようとするのだと思います。 実は不思議なことですが「できる社員ほどメンタルになりやすい」ということをご存知でしたか? 次回はその理由について解説します。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

なぜ、できる社員ほど「メンタルになりやすい」のか

幸せに働く社員を作るためのストレスチェック活用法 3

結論から言えば、「周りの期待に、自分の限界を超えて必要上に応えようとする」からです。そのなにが悪いのか、とおもうかもしれません。できる社員は「自分の限界を超えて」周りの期待に応えようとするので、メンタル不調に陥ってしまうのです。もっとシンプルに言うと、「周りの目を必要以上に気にする性格」であるので、仕事はできるのですが自分自身が壊れてしまう人が多いのです。 1. 心理テストでリスクがわかる。 弊社顧問である筑波大学名誉教授・宗像恒次博士が開発した、自己抑制型行動特性尺度というものがあります。これをやっていただくと大まかにメンタル不調になりやすい人がわかります。やってみてください。いつもそうであるは2点、まあそうであるは1点、そうではないは0点として計算します。 2.得点の意味を解説する。 1)11点以上の人 周りの人の目を非常に気にする人で、仕事ができる人が多いですが一方、自分を必要以上追い込みすぎるためメンタル不調になりやすい人です。とくに15点以上取る人は危険レベルです。弊社の調査では、仕事ができる人には11点以上取る人がかなりいることがわかっています。 2)7点から10点の人 日本人の平均レベルです。ただ、周りの人間関係が安定していると問題は起きませんが、周りの人間関係の相性が悪いと不安定化します。日本人の約8割以上は7点以上取りますので、人間関係によってはメンタルが不安定化しやすいという特徴があります。 3)6点以下の人 周りの顔色に影響を受けないため、メンタルは安定しています。日本人には約10パーセント程度しかいないことがわかっています。経営者としてはこういう人材を多く採用したいと思うと思いますが、そういうわけにはいきません。日本人には10パーセント程度しかいないからです。ということは、こういう人材に育てることが重要だということになります。また、今いる人材に対してはこの心理テストの得点が6点以下になるように、ストレスを乗り越える技術を身に着けさせるよいのです。教育を行うということです。では具体的にはどうしたらよいのでしょうか。ストレスチェックなどをうまく活用しながら、その方法を次回に解説します。

  • 2020.01.13
  • 実践ヒント

本当の意味でのメンタル対策を行って社員を幸せにし生産性を向上させる

幸せに働く社員を作るためのストレスチェック活用法 4

では社員を幸せに貢献するメンタル対策とはどのようなものでしょうか。まずは考え方をご説明します。 1.メンタル不安定化を作り出す性格的な要因を理解する。 今の義務化された政府推奨のストレスチェック(57問版、23問版)では、実はメンタルが不安定化する本人側の原因というものを明確には特定できないと弊社では考えています。今のストレスチェックは、現在どれだけストレスが蓄積しているかということと、それが引き起こされる周囲の原因を質問しています。しかし自社でメンタルの問題が起きている経営者やメンタル責任者の方々は直感的にわかると思いますが、周囲の原因だけで本人のメンタル不安定が作られているわけではないということが見ていてわかると思います。周囲の原因がとくにないように思われるのに、本人は調子が悪いという人は実はたくさんいるのです。これは本人側の性格要因が原因となるものですが、性格要因の一つを測定する心理テストの一つが前回の原稿でご紹介した「自己抑制型行動特性尺度」です。この心理テストが11点以上取る人は「周りの顔色を気にする度合いが非常に敏感」なため、周りが何か傷つけるようなことをしていなくても、勝手に傷ついてメンタルが不安定化するのです。今のストレスチェックは周囲の原因だけを測定しているもので、本人側の性格要因を測定していません。このため、先ほどの心理テストの得点が11点以上取るような人の対策が行えないのです。この方々は周囲の環境をいくら改善しても、本人側に問題があるので関係ないのです。弊社が2005年に行った6000人の大規模な企業調査では、自己抑制型行動特性尺度の平均点は9.8点です。平均点が9.8点ということは11点以上取る人はかなりの割合がいることになります。 2.性格要因を明確にする診断テストを別途実施する。 現在各社で行われている義務化されたストレスチェックの規定では個人情報を得てはいけないことになっています。性格診断テストは個人情報ですから、義務化されたストレスチェックと一緒に行うことはできません。よって弊社では別のタイミングでもう一度性格診断テストを行うことを提唱しています。別の機会に行う診断テストは、法律で規定されているストレスチェックではありませんので、社員の同意をとれば会社は社員の性格要因を把握することができます。それにより、メンタルリスクを軽減する本当の意味での対策をとることができるのです。ただ1点注意点があります。事前の説明なしにメンタル調査だというと社員は協力してくれない人が増える可能性がありますので、メンタルという言い方ではなくキャリア支援をするために実施する、という言い方で行うとうまくいきます。実際にメンタル問題とは、仕事の悩み、業績達成の悩み、職場の人間関係の悩み、などを抱えた状態であるからです。キャリアの視点から社員の皆さんのパフォーマンス向上を支援するために調査します、と言って診断テストを実施するとよいでしょう。